二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: spring wars! 【サマーウォーズ】 ( No.6 )
日時: 2011/05/03 11:43
名前: 銀狼 ◆DHnYhbdLwQ (ID: h9rhVioE)

序章










——————あれから、あの事件から半年以上が過ぎた。外を見れば鴬(うぐいす)が鳴き、桜が咲く季節となった。
おだやかな日差しの下で、ぽてぽてと走る青年、小磯健二は大量の資料、荷物を抱えていた。


「—————っ! 今日朝から講義あったのに寝坊したっ!!」


学校へ登校している女子高生や主婦を横目で見ながら、健二は大学へとひた走っていた。
今はあれから三年後、2012年四月。東京へと戻った健二は勉強に励み、無事東大にギリギリのラインで合格していた。それなりの努力もあったことだが、ほとんどの期間は親友の佐久間敬のバイトを手伝っていた。給料割増しで。その金額に目がくらんだ結果、勉強を怠ってしまい追い込みという時もあった。
——————だが、受かったことには変わりは無い。東大はトップクラスの大学だ。良い教授も居るだろう。『綺麗』な数学も出来るだろうと期待をしていた。

そのように走っていると時間に間に合い、そこには佐久間が待っていた。
とてもうざいドヤ顔だ。


「おー、健二間に合ったかー。そりゃあ楽しみにしてたもんな!」

「佐久間……なんでここに居るん……」

「あぁ、今日の講義の補佐に来たの!」

「ほ、さ……?」


今日の講義の補佐と言う。
佐久間。今日エイプリルフールではないが。


「今日の講義OZの管理塔の制作部長だぜ?」


OZの管理塔……制作部長……っていうのは知っていたが佐久間が補、佐。
なんと佐久間はそれなりの役職についていたらしい。だから仕事もあんなグレードアップしていたんだと健二は感心した。


「……て、ええええええええええええええええええええええええ!!!」

「健二! 叫ぶな!」


佐久間が慌てて健二の口を抑え込みやっと絶叫は収まった。しかし周りの生徒は『………』という感じでこちらを見ている。
無言からの沈黙の威圧感!


「あ、講義始まるから。俺裏行くわ」

「佐久間頑張ってねー逝ってらっしゃい」

「棒読みでそれイワナイデ!」


それから、少し時間がたつと講義が始まった。
その内容はとても興味深いもので、OZの制作途中のプログラムの解説、原理、セキュリティーの精度の説明などが話された。結局そんなに理解はできなかったけど———————。

佐久間は幕の裏でアバターを操作するだけだった。きっと出られなくて悔やんでいることだろう、その光景が目に浮かんでくる。









———————僕にとっての上田は、自分の未来を変える一歩、道標だったのかもしれない。上田に行かなければ僕はそんなに積極的にも、ネガティブな思考から解き放たれることも無かっただろう。
でもそれからの家に帰ってからの反動がとても大きなものだった。でも、認められるように努力してみた。
いつもは親の目が嫌だった、ただ数学に打ち込んで嫌なことから逃避し続けるだけの人生だった。


「……頑張るんだ。数学だって、何だって」


その時にヴヴヴッ!っと携帯のバイブ音が鳴った。やっぱり佐久間かな、と思いつつも携帯を開くと、一つのメールが届いていた。
その、内容は。







      『コノ、ペエジヘリンクシマス』





パチンッ!と何処かで聞いたことのあるような音が聞こえると、携帯の液晶が真っ暗になった。なんということだ。
ウイルスメールだとしたら……ああ、ウイルスチェックしておくべきだった。携帯が使えなくちゃどうにもならない。


「とりあえず、家のパソコンからOZに一回ログインしてみようかなぁ……」


そう言って、家への道をとぼとぼと歩いて行った。












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