二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: spring wars! 【サマーウォーズ】 ( No.10 )
- 日時: 2011/05/14 21:18
- 名前: 銀狼 ◆DHnYhbdLwQ (ID: h9rhVioE)
一の陣・壱 噂
最近、このような噂が浮上している、単に噂だけど。
OMCや他の娯楽施設でめきめきと実力を上げていってるアバターが居るらしい。世界的なネットワークシステムではそんなことが噂になるのが珍しい。もう既に掲示板ではIDと名前が分かっているそうだ……探偵ごっこのようだがナメたもんじゃないな。
キングカズマ、いや佳主馬君にも挑戦者として現れるのかな。実に見てみたい。
今のOZは前と比べられるようなもんじゃない、かなり発達してきた。
本当に身近な存在にあるのだ。
例にとると、全国的に設置された自身がOZを体験できる施設、『OZ‐dreamytheater』が有名だ。僕もやってみたことがあるけどあのアバターのバランスでかなり転んだ。いや悲しい。
そしてもっと凄くなると食べ物を食べることだってできる。ただ食べるだけじゃなくて操作してる側も食べてるような『感じになる』というもの。これはパソコンから満腹になる周波を出しているらしい、素晴らしい。
「……あ、着いた。……懐かしいなあ」
健二の目の前には、ドデカい門。そして奥には豪華な武家屋敷。
そう、ここは長野県上田。あの事件で大家族と共に戦った場所だ。
人工衛星『あらわし』は栄の人脈と権力によって綺麗さっぱり、何事もなかったように元通りになっている。
すう、と爽やかな空気を吸うととても心地よい気分になる。やっぱり、此処は上田だ。都会とは全く違う田舎の原風景、排気ガスによって汚れた空気とは裏腹な新鮮な空気。
「考え事してないで早く挨拶しに行こう……」
そうこうしているうちに10分も経ってしまった。急いで向かおうとするとまだ距離がある。今だけこの家の敷地の広さを憎んでいいですか。
デカい池にデカい庭。そしてあらわしの墜落によってできたデカい温泉。この家はデカいものオンパレードだ。
やっと家の前に着くと、インターホン……が無い。ドンドン、とドアを叩いて中へ入った。
中からは万里子おばさんが出てきた。
「万里子おばさん。お久しぶりです」
「あら! 健二君。今年も来てくれたの」
「今年はいつにもまして暇で……」
「なら早く上がって。健二君のお部屋は去年と同じ。とりあえず居間に来て頂戴」
「はい」
万里子おばさんは相変わらず変わらなく忙しない。着物姿で早足で廊下を歩いているのがとても尊敬する、本当。
外を廊下から覗いてみると、庭にはまだ満開の桜があった。桃色に染めあがった花弁をじーっと見ていると。ぼけっとしていたようで鞄が下に落ちた。
「そうだ、あそこも覗いて行こうかな」
健二が行った先には、薄暗い中で青白い光が零れる部屋だった。そしてそこには小さな背中ではなく、大きくなった背中があった。カタカタとキーボードをたたく音と、ヘッドフォンから大音量の有名アーティストの音楽が聞こえてくる。
「……お兄さん?」
「……うわ、気づいた?」
「視線が感じられた」
「鋭い」
そこには去年とも一昨年とも変わらない姿があった。佳主馬君だ。
身長がぐんと伸びたようで、少し声も低くなっていた。流石は成長期。
「佳主馬君身長伸びたねー。追い抜かされそうだ」
「てか抜かす」
「……ははは」
やっぱり佳主馬君は全部変わらない。そんな睨みだって。
「何笑ってんのさ」
「いや、変わってないなーと思って」
「僕が変わってくれたら良いの?」
「……え……いや……」
突然の問いかけに困惑した。いやそんなこと言った僕も悪いけど。
「居間に、行くね」
とりあえず、流しておくことにした。
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