二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【真実ト嘘】    イナズマイレブン返信100突破!! ( No.148 )
日時: 2011/06/15 20:39
名前: 紅闇 ◆88grV3aVhM (ID: dNKdEnEb)
参照: きゃっほーい。

⑤第五話







 暫くの間、俺たちは動かなかった。
ただ、依林から「跳んで!」と言う指令があったのを除けば、の話。
 その時は何が何だか分からず、適当に上に跳んだだけだった。
しかし、足があった辺りを、何かが掠めていくのが分かった。……真っ暗で何も見えないはずなのに……
……何と言うか、暗闇よりも更に真っ暗な漆黒の闇が、刃となって駆けて行くような感じ。
 相手はこんなにも闇を操れるのか……?
そう思った俺は、少しばかり恐ろしく感じた。
視覚が不自由な今、頼れるのは聴覚。後は、考えるよりも先に体が動いてくれるのを祈るだけだ。
 俺は、閉ざしていた意識を再び闇の世界へと向けた——


















「……こう、何も見えないと色々不便だな」


 追突に、風丸が口を開いた。少し顔が青ざめているように見える。
それは、周りの闇のせいなのか……。


「ああ……恐ろしいぐらいだ」


 鬼道は、自分が目を開けているのか閉じているのか分からなくなってきた。
自分の手を見て、ようやく目を開けていると実感できるのだ。


「【月花】の気持ちがやっと分かったな……何も見えなくて不安なのに、あんなに笑顔でいられるなんて……」


 ため息混じりに依林も言う。
月花とは誰か? それはその内。


「……さっ、集中して。言っとくけど、今まで私たちが喋っていた時も、攻撃が来てるんだから」
「「分かってます」」


 二人がそう言った瞬間、闇の刃が依林の頭を掠めた。


「そういえば……無陰バッジを使えば見つからずに済むんじゃ……」
「生憎、バッジの期限は過ぎちゃってますねー。まあ、貰ったのは使い回しの奴だったから仕方ないけど」
「……よし、茜に文句言うぞ」
「雰囲気ぶち壊しじゃないか」


 刃が、鬼道と依林の間を通り抜けた。


「……クルキ……出てこないな」
「あいつは戦略型なのよ」
「てっきり、クルキは体力とかで戦うと思ってたんだが」
「残念でした、違います」


 風丸の足元に突き刺さる刃。
誰も攻撃に目を向けない。








「あーもう! 苛々させんじゃ無いよッ!!」








「「「——!」」」

 三人ののんびり過ぎる態度に我慢出来なくなったのか、クルキが姿を現した。
 真っ黒の服は闇に紛れて見えず、肌が白く浮かび上がっている。


「戦う気でもあるのかい?」


 落ち着いて話そうとしているのだが、怒りで声が抑え切れていない。


「俺たちは正々堂々と戦おうと思って……」
「どう見てもそんな風に見えないんだよッ!!」


 今は、依林の前に風丸と鬼道が並んでいる。
クルキが前に進もうとした。


「今だッ!!」
「「<風牢>!」」
「——!!」


 クルキの周りに暴風が巻き起こった。
風はクルキを包むと、縄のように固まり、縛った。


「これは……!」
「いやあ、有難う」


 さっきとはうってかわり、依林は真剣な表情になっていた。


「この技二人ので、かなり使えるんだけどね、使用範囲が物凄く狭いんだ。
 私たちが近づくってのもあるけど、そんな危険極まりない事はしたくない。君から近づいてくれて助かったよ」
「さっきのは作戦か?!」
「俺たちが戦いの最中にあそこまで私語を話す事は無い」
「……と、言うか有り得ない、だな」
「さっ、早く此処<世界>を出ましょう」
「ああ……風丸」
「分かってるって」


 風丸が、クルキに向けて刀を向けた。
——その時。


「……プッ……ハハハハッハハハハハハッハ!!」


 世界に、狂ったような笑い声が響いた。


「——?! 何を……」
「ハハハハッ!! そうか! お前たちはあたしが創ったこの世界を出たいんだな?!」
「何分かりきった事を言っているんだ!」
「そうかそうか……。残念ながら、あたしを傷つけることで此処を出れると言うのは大間違いだ!」
「……は?」


 拘束されながら、見下したように笑うクルキ。


「意味が分からないね! 茜に、ちゃんと出る方法を教えて貰ったんだから!」
「……茜、だって?」

 
 笑い声が途絶えた。


「茜、とは……咲乃の事かい?」
「だったら何だ」
「……なるほど。おい、アンタ——それは”本当に”咲乃だったのかい?」
「……はい?」
「フッ……まあいい。訊いてごらん、本人にねッ!」


 その瞬間、クルキを縛っていた”風”が消え去った
——いや、闇に飲み込まれた。


「「「——?!」」」



「まあ……やり方が違ったとはいえ、あたしを拘束するなんて、いい事考えたじゃないか……
 こんなヘナチョコの魔法で、良くやったと思うよ」
「チッ……」
「あたしとした事が……油断するなんて……子供を甘く見すぎた……いや、前にもあったか……」


 目を瞑り、手を前に突き出した。


「今度こそ……こんな失敗はしたくなかったんだが……」


 手の内に、紫に近い、黒々とした光が集まった。


「何を……する気?」
「我ら、『黒』に敗北は許されない——






   アンタ等、死んで貰うよ」


























 黒の閃光が、隊員たちに向かって、発射された。












 まるで、死に導く絶望の光のように——






















「「「「——!!」」」」



























































「——誰が……死んで貰うって?」