二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【真実ト嘘】 イナズマイレブン 一幕終了! ( No.197 )
日時: 2011/07/16 00:33
名前: 紅闇 ◆88grV3aVhM (ID: dNKdEnEb)
参照: 遅くなってゴメンなさい。コメ返し、明日やります

①第二話<月花>











 軽く睨みながら、その名前を言った未鈴。
一方、予想しなかったのか、前の男は細めていた目を開いた。


「……僕に、かい?」
「一体、この狭っ苦しい部屋の何処に“月花”なんて名前があるのよ」
「(何気に酷い事言ってる……)」


 男——月花は溜め息をつくと、黒い細淵眼鏡をかけ直した。


「僕に……ねえ。また面倒事にならなきゃ良いけど」
「聞こえてるわよ」
「まあ、うん。お客様だよな、一応。一応な」
「五月蝿いわね」
「あーあー。このギャーギャー騒ぐ奴が“また”来るなんて、僕もついてないなあ」
「この図書館ごと吹き飛ばすわよ」


 未鈴の言葉を無視すると、月花は漢数字の一を書くように空を切る。机に沢山積まれた本に向かって。


「——え」


 依林が、驚きの声を上げた。 
何かに持ち上げられた様に本は空中に浮き、自らを置く本棚に向かって飛んでいったからだ。
本は、開いていた場所に身を収めると、そのまま動かなくなった。
 机の上の本は片付けられ、奥に先程までは見えなかった黒い椅子も見えた。月花専用の椅子だろうか。

 
「掃除完了。さあ、話をどうぞ」


 椅子があるにも関わらず、月花は机に腰掛けた——と、言っても軽く寄り掛かるだけの様だ。
男にしては長髪だろうか。青の髪に膝辺りまである、黒いマントのような物を羽織っている。その服装に似つかわない優しい笑顔。
 笑みを浮かべながら、月花はゆっくりと口を開いた。


「もう一度訊こうか、未鈴。一体、この図書館……いや、僕に何の用かな?」
「……相変わらず変な魔法を使うのね」
「四季家代々伝わる特別な力だから、仕方ない」


 未鈴の口は、言葉こそは発しなかったものの、微かに動いた。
後ろの方にいた過去は眉を潜めた。未鈴がなんと言おうとしたのか、分かったのだ。


「…………」
「本題に入る前に、確かめることがあるわ」
「なんだい?」


 唐突に、未鈴は向きを変えた。


「皆、何か分かったかしら? この場所について」
「……いきなり、だね」



 






「分かりそうな気はする」
「何かが詰まっちゃってるんだよね〜」
「……未鈴、話して良いのか? と、言うか話して無かったのか?」
「まあ、思い出してくれる方が良いじゃない。その方が色々都合が良いのよ」
「……君には掴み所が無くて困る。昔から、ずっと」
「それはどうも」
「褒めてない」










「あのね、“図書館”って場所を考えるから駄目なのよ」
「いや、そんなこと言われても……」
「……此処は、別の名前があるって事なのね」
「そう。まあ……






            『試練の間』とでも言いましょうか?」









「あーー!!」


 炎愁が大声を出した。


「それって、俺達が隊員になる前に行った場所じゃないか?」
「……あっ」
「確かに……私も行った、か」
「なるほど。隊員になる前なら、誰でも行くわね……」


 試練の間、とは。
この国は、隊員になる前に一度度胸試しの様な事をする。
いくら実力があろうとも、ここを抜けなければ正式な隊に入ることが出来ない。
隊員だけではなく、国にとって大切な役割を持つ者も、だ。


「あれ……でも」
「何? つらら」
「どうして、私たちはその事を忘れてたの? ……あんなに大変だったのに」


 最後の方は、声が小さくなった。
未鈴は、ビシッと月花を指差した。


「それが、コイツのせいなのよ!」
「——?」
「……変な濡れ衣を着せるな」