二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 星のカービィ 幻想の魔筆  参照300突破!  ( No.118 )
日時: 2011/05/28 14:32
名前: 満月の瞳 ◆zkm/uTCmMs (ID: A2bmpvWQ)
参照: http://http://www.youtube.com/watch?v

第五楽章 開幕の諧謔曲(スケルツォ)


♪:*:・・:*:・♪・:*:・・:*:・♪・:*:・・:*:・♪♪:*:・・:*:・♪・:*:・・:*:・♪・:*:・

ポォ…

いつもの三角帽子と同じ色の、呪式や文様や刻印が描かれているマントを、僕ちんは魔法によって生じる風にはためかせている。
僕ちんの立っているばじょを中点として、半径3mくらいの魔法陣が、不気味な紫色に輝く。
これは、ちょっと高度な召喚魔法だ。

「『招と従!躁と操!凛と燐!対象の力!召喚の呪!我が名に持って命じる!』」

僕ちんは毎日ドロシアの特訓を受けている。
今日もいつもと同じ森で訓練している。

「『—————!———!———!——————————!!』」

最初の呪文(スペル)と違う魔法言葉を、僕ちんは舌をかまないようにして素早く詠唱する。
魔法言葉は生物の言葉ではない。
だからと言って誰の言葉というわけでもない。
誰の言葉でもない。
常人なら決して聞き取れないだろう。
僕ちんだって全ては把握していない。
意味も使い方も全部わかるのは、ドロシアのようなベテランレベルでなければ不可能だ。

「『—————…!—————…————————!』」

ちょっとでも油断したら、集中力がたちまち途切れてしまう。
それでは魔法にはならない。
高位魔法ほど、呪文(スペル)は長く、扱うのが難しい。
あと少し…。
僕ちんの周囲から発生される、不可思議な蛍火のような光が、だんだんと明るさを強めていくのがわかる。

ドロシアは黙って真剣に、僕ちんの魔法を見つめている。

失敗したらちょっと恥ずかしいかな……いかんいかん!魔法に集中しなきゃ!

「『—————!!————!』」

蛍火が僕ちんの真上に集合していく。
集まってくると、魔法陣の直径の二分の一くらいの大きさの、半透明のブロックがゆっくりと形成されていく。

「『——————————…』」

あと一小節!
魔法の完成は間近だ。
成功するかはわからない。
でも、少しでも成功を祈って魔法にさらなる力を込める。
自分の頬に汗が伝う。

「『—————!————!———————————————!!』」

魔法を最後まで唱えきった。
その直後、さっきまで半透明だったブロックが完全に実態を得た。
紫色のシンプルなブロックに。
そして、そのブロックの上蓋がパカっと開き、中から大量の小さな紫ブロックがあふれんばかりに出てくる。
その全てが、しっかりと宙に浮かんでいる。

「やったあああああああああああああ!!成功したあああああ!!」

嬉しさのあまり歓喜に打ち震えてしまう。

「おめでとう!グリル!」

パチパチと拍手をしてくれるドロシア。
僕ちんのたった一人の師匠—————。

「やったよ!見た?見た?見た!?やったよ!僕ちんやったよ!浮遊魔法をマスターできてる!ちゃんと召喚できてるよ!!できてたよ!」

なんだか口からビックリ箱みたいにたくさん言葉がでてくる。
感動のあまりでうまくしゃべれない。
ドロシアに思いっきりダイビングして抱きつく。
ドロシアは僕ちんを優しく受け止める。

「ええ。しっかりとこの目で見てた。魔法は完璧だったわ。グリルの魔法の腕は格段に上がったわね」

あれから長い間、ドロシアに魔法を教えてもらった。
うまくできなくて、ちっとも魔法が身につかなかったりもしたが、ドロシアは決して僕ちんにサジを投げなかった。
できない僕ちんに、ずっとずっと教えてくれた。
そのおかげで、僕ちんは少しずつ強くなっていた。
今はもう、高度な魔法も習得できるようになっていた。

「『戻れ』」

何度も練習して暗記した送還の魔法を、慣れた手つきで僕ちんは唱え、宙を踊るブロックたちを消す。

「エヘヘ…」

魔法を勉強するのがとても好きになった。
前まではあんなに嫌いだったのに。
やっぱりドロシアが教えてくれるからだ。

僕ちんは、薄そうに見えて意外に厚い皮で作られたマント(もちろんこれもドロシアのお手製)を脱いで畳む。

「ドロシアの魔力がこもったマント…やっぱり魔力が格段にあがる!」

「そう?…でも私の魔力はあまり使わない方がいいわ…今回のような魔法以外では使っちゃいけない」

「どうして?」

「私の魔力は、ちょっと普通とは違うから…」

「ふぅん…」

きっと力が強いから、僕ちんにはまだ使いこなせないんだな、と僕ちんはこの時そう思った。
本当の答えを知るのは当分先のことになる。

「さてと…グリル…あなたの魔法はとても進歩したわ」

「わーい!」

「さすが私の弟子ね」

ドロシアの美しい笑顔。
これが僕ちんの師匠。
僕ちんの大好きな師匠。
その大好きな師匠に褒められることは、とても光栄で幸せなことだ。

「僕ちんもドロシアの弟子としてがんばったよ!」

「あら、それはとてもいいことね」

「でしょぅ?」

「さてと…今日はこのくらいにしましょう。続きはまた明日」

「えぇー?僕ちんまだいけるよ?」

「駄目。高度の魔法は体力をかなり消耗するから、今日はもう危ないわ


「はーい」

「じゃあグリルの箒、そろそろ修理しましょう。修理の仕方は覚えている?」

「もちろん!」

「材料をとってきてくれる?森のあっち側にあるから」

「了解!いつものハシバミの枝でしょ?」

「なるべく太いものをね」

「イエッサー!!」







ドロシアの傍にいることは、とっても幸せ。

ずっとずっと傍にいたい。

この時点で僕ちんは、何年もこの『箱庭』に暮らしている—————