二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 星のカービィ 幻想の魔筆 参照300突破! ( No.130 )
- 日時: 2011/05/30 21:11
- 名前: 満月の瞳 ◆zkm/uTCmMs (ID: A2bmpvWQ)
甘い香りが、心地よい風に乗って流れてくる。
「う…」
うっすらと目を開けると、まぶしい光が降り注ぐ。
ポカポカとした春のような陽気。
雲一つなく澄んだ青い空が広がっている。
(あれ…プププランドは秋だったのに…?)
秋の涼しい様子はここにはなく、全てに恵みを与える暖かな春だ。
(ここはどこだろう…?)
まだ安定していない意識。
視界もうっすらとしている。
フワリ…
やわらかい風が、頬を撫でるのを感じる。
そして、目の前に色とりどりの、無数の花びらが舞い飛ぶ。
「あ…」
カービィはようやく自分が仰向けに倒れているということに気が付く。
覚醒した意識は、今まで見たことがないくらい美しい景色を映す。
そこは花畑だった。
この世のものとは思えない、現実離れした—————
浮世離れしている。
甘い香りは花の香り。
バラやチューリップ、コスモスやパンジー…たくさんの種類の花々が絨毯のように生えている。
その真ん中に、カービィは倒れていたのだ。
「綺麗…」
これほどの花畑、プププランドにはない。
草花の星フロリアだってここまで美しいものはないだろう。
風が吹くたびに花が揺れ、夢のような景色を生み出す。
「ここは…どこだろう」
プププランドではないことはわかる。
それどころかポップスターにこんな場所はない。
じゃあ他の星なのか…。
「あ!」
カービィは思い出す。
プププランドの惨状。
皆が囚われている絵画。
謎の声。
そして━━━━━━━━━━━━━━
「じゃあどこかにボクは転送されたってこと?…だよね、それしかないよね。で、一体どこに転送されたんだろう。…こんな現実離れした場所がそうそうあるとは思えないし…」
うーん…と、カービィは考える。
しかし…
「わかんないや…」
回答は見いだせなかった。
「どうしよう…早くみんなを助けないといけないのに…。…?」
ふと自分の姿を見る。
あんなに汚れていた体が、シャワーを浴びた後のようにきれいに戻っている。
「なんで?」
はてなと首(ないけど)を傾ける。
でもそのことはすぐに吹っ飛んでしまう。
「それよりも早く皆を…!とりあえずここからでよう」
花畑は眺めていたかったけどそんな時間はない。
カービィはスペースのあいている場所から軽く地面を蹴り、宙に浮かんで移動する。
花を踏んでしまったらいけない。
空中移動は長い時間はできない。
幸い、この花畑はそこまで広くはなかった。
花のない野原に足をつかせる。
そして、目の前に砦のように立ちふさがる巨大な豪勢な屋敷を真正面から見る。
「うわぉ!こ、こんなに大きい建物あったの!?」
違うことで頭がいっぱいになっていたから気が付かなかったのだろう。
気づいた今は、これに気づかなかったなんて…とさえ思ってしまうほどの存在感に屋敷はあふれていた。
屋敷の壁は真っ白で汚れ一つなく、わずかに見える屋根はルビーのような真紅色だ。
大きさはデデデ城と五分五分くらいだが、豪華と美しさでいったら圧倒的にこっちの方が上にたつだろう。
「この中に誰かいるかな」
空き家とは思えない。
といってもこの星(?)は見渡す限りの花畑(他にもたくさんある)やら森やらで、家はここしかないのだ。
「本当にここはどこなの?こんな星見たことも聞いたことないけど」
カービィは一応星の戦士。
頭はあまりよくないが、宇宙の星々は旅をしたことがあるからそれなりに宇宙地理は把握している。
だけどこんな場所は知らない。
ポップスター周辺の星ではないのだろうか。
「ここからじゃあワープスターも呼べないし…」
自分の分身ともいえる愛機は、場所もわからないところからでは呼び出すこともできない。
「やっぱりこの中にいる人にここはどこなのか聞こう。それで何とかしてでもポップスターに戻らなきゃ!」
いそいそと、目を疑うほどの大きな正面門の前まで走り、空中移動しなければとどかないドアノブまで行こうとするが、その必要はなかった。
ギギィィィ…—————
「!!」
重々しい音とともに、扉が1人でにあいた。
こんな重量のある扉が勝手に開くなんてありえない。
まるでカービィを迎えるかのように…
「!!?」
その直後、カービィは顔が凍りついた。
気配を察知したのだ。
〝デデデ城から感じた恐ろしい気配を〟
液体窒素のような冷たさ。
死後の世界のような凍え。
「まさか…」
ここにプププランドや皆をあんなめにした奴がいる…?
「でも…気配は全く同じだ…!」
ブルリ…と、春のような温かさなのに思わず体を震わせてしまう。
「なんで…ボクはここに…!?…じゃあボクを呼び出したのは…!」
そこから先は言葉がでなかった。
でも
だったらどうしてあんな悲痛の声で…?
「…でも…関係ない…!」
プププランドや皆を…!
よくも…!
「ゆるさない…!ボクが絶対に…!」
カービィは走り出した。
この道何があるかわからない謎に満ちた屋敷の中に。
仲間と星の救済のため。
「皆…!必ずボクが助けるから…!!」
この時点でカービィは気づいていない。
『箱庭』について。
これからおこることにも。
そして、真実も—————
星の戦士は、狂い始めた空間に向かう。
そこに待ち受けるのは…—————