二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 星のカービィ 幻想の魔筆  参照400突破!  ( No.140 )
日時: 2011/06/05 20:15
名前: 満月の瞳 ◆zkm/uTCmMs (ID: A2bmpvWQ)

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「広い…広すぎる!」

カービィは思わずそう叫んでしまう。
謎の屋敷に侵入したのはいいが、気が遠くなるほどの広さだった。
最初に正面玄関を通って、巨大なホールにたどり着くまで、直線の廊下だったのにかなりの時間がかかった。
しかもそのホールから続く道が、永遠に終わりがないのかとさえ錯覚してしまうほど長い廊下が2本と、延々と次ぐ豪奢な階段がある。
外から見た大きさは、デデデ城と同じくらいと思ったが、中に入ってみたら城の何倍も広い。
まるで迷路だ。
しらみつぶしに当たるにしても、一生終わらないかもしれない。
否、一生はかからないが、何か月もかかるだろう。
それぐらいの広さだった。
自分がいるところさえ分からなくなってしまいそうな、圧倒的な空間だった。
こんなに巨大なのに、誰もいないのだろうか。
でも、さっきオーラを感じた。
誰かはいるのだろうか。
わからない。
とにかく捜索しなければ。
プププランドや皆のためにも。

「とりあえず…気配が強く感じるところから探していこう!」

この状況に愕然としてはいけない。
戦士たるもの行動あるのみ!

「でも、メタナイトみたいにすごーく感知できるってわけじゃあないからね…がんばらなくちゃ!」

手がかりは絶対にここにある!
それだけ分かっていればもう十分だ。

『物事に対する文句は行動してから言え!そうじゃないと負け犬みたいで見ていて馬鹿らしいゾイ!』

デデデの言っていた言葉を心に刻みつける。

そうだよね!
そうじゃなきゃ何も始まらない!

「うし!いくか!」

自分に喝をいれ、レッドカーペットのひかれた大理石の床に、一歩ずつ踏み出していく。

天井には、氷のような透明感でしつらえられた豪勢なシャンデリア。
壁にはよくもわからない絵が大量にかけられている。
全体的に純白な調度品。
西洋風の豪邸。
建物も調度品も合わせて、何千人の内臓を売っても購入できないだろう。
それほど高級感があふれている。
カービィなんかが踏み込んでいい領域とは思えない。
ここは選ばれしものだけが住める場所だ。
しかし、今はそんなことにかまっていられないのは確かだ。

「上のほうから感じる!」

確証できる感知ではないが、今はこれを信じて頼るしかない。
カービィは小走りに走る。
上質な毛で織られた絨毯は、その足音すら吸収してしまう。
大理石で作られた冷たい階段を、カービィは上る。

「お姫様が上るような階段だよね—————デデデ城の階段だってここまで立派じゃないよ」

デデデ城の階段は、レンガで固められてできているようなものだ。
だけど、そのぶんだけ慣れがある。
こんなにも立派な代物だと、上ることにも緊張感が湧いてしまう。
一歩一歩がとても貴重な気がしてしまう。

「えっと…何階まであるのかな?ブルブルショッピングモールみたいにちゃんと書いてあるといいんだけどなぁ」

2階についた。
2階は1階よりも少し廊下の道幅が狭いが、それでも迷路のように広く、パッと見ただけで嫌気がさしてしまうほどの部屋数を視認できてしまう。
真っ白な扉が無数に廊下に点在している。

「まだ階段には続きがあるし…」

オーラがよくわからなくなってしまう。
こうも構造が厄介で、自分の位置すら把握していないと、そのぶん気配もわかりにくくなってしまう。
外から屋敷を見たとき、だいたい5、6階の髙さだったと思うのだが…
それすらおぼろげになってしまう。

「もう一階分だけあがろう」

そう一言言い、再び会談に足をかけようとする、がそれは阻まれた。


ガシャアアアン!!

「ひっ!?」

突如、2階の廊下の奥から、激しく何かが割れて砕け散った音が響いてきた。
カービィは突然の驚きのあまり、少々情けない声をもらしてしまう。
背筋が凍りつく。

「ななななな、なにィ!?」

ビクビクと振り返ると、先ほどと同じ景色。
何も変わっていない。
音はもうやんでいる。
シンとフロアは静まり返っている。

「…ボクは何もしてないよ?…割れたのは…食器かな?」

以前にフームたちの家で食器を割ったときと同じ音だった。
でも、あれはカービィ自身が足を滑らしてしまったことからおきた。

「勝手に食器が割れたらおかしいよね?ポル…なんとか現象じゃあるまいし…」

正しくはポルターガイスト現象だ。
物が独りでに動くこと。
ありえないこと。

「やっぱり何かあるんだよね!」

カービィは階段から離れ、廊下にとびだす。
先ほどの音の発生源の方向を向いて。

「こっちになにかあるのかな?」

カービィはそっちの方向に足を進める。
一本道の廊下の両側とも、部屋に続く扉がある。
どこで食器が割れたのか思考する。
確か、近くの音ではなかった。
もう少し離れた場所だ。

「!」

数分歩いただろうか。
カービィから見て左側の壁の、少し離れたところにある扉が、大きく開いている。
今までで開いていた部屋はどこにもなかった。

「怪しい!」

カービィは走り、既に開いている部屋の中に突入する。
その刹那。

ビュン!

「!?」

空気を斬る音がわずかに聞こえた。
咄嗟にカービィはその場に素早くしゃがむ。
数瞬遅れて、頭の上を何かが通過した。

カッ

何かは向かいの壁に突き刺さった。
それは—————割れた食器の破片だった。

「誰かいるの!?」

カービィは顔を上げ、部屋を見る。
そこには驚くべき光景が広がっていた。

食器の破片が、独りでに宙を浮いている。
部屋の中には誰もいない。
ましてや家具すらもない。
隠れられる場所なんてない。

「え!?」

カービィの瞳が驚きに見開かれたと同時に、鋭い刃物のような破片が一斉に、カービィを狙って飛来してきた。