二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 星のカービィ 幻想の魔筆 お知らせ! ( No.153 )
- 日時: 2011/06/12 13:42
- 名前: 満月の瞳 ◆zkm/uTCmMs (ID: A2bmpvWQ)
- 参照: 気分展開に更新wwwテストもう嫌www
「あれ?」
ふとカービィはとあるものを目にした。
3階の踊り場。
赤い絨毯が存分に敷かれた豪華な階段の途中。
そこには小さなチェスト(これもまた高級そうな)の上に置かれた、薄い氷の膜のような繊細な花瓶に目が向いた。
と言っても、花瓶自体に違和感を覚えたわけではなく、花瓶に活けられた花が不思議に思えたのだ。
「しおれていく…」
ついさっきまで、水々しく咲いていた花が、目を疑う速さで水分が奪われ、しおれていく。
まるで録画したビデオを何倍速にもしてその光景を見ているようだ。
白色の花は、みるみるうちに干からびた土色に変化する。
姿勢よく伸びていた茎は、年をとるように曲がっていく。
そして、ただの枯れた花になった。
「…嘘ぉ」
わずか十秒くらいの出来事に、カービィは動揺せざるを得ない。
一瞬、これは現実なのかと疑いたくなるが、目をこすっても結果は同じだ。
「花が一瞬で枯れるわけ…ないよね?」
自分自身に言い聞かせるように問いかける。
『花はね、長い時間をかけて、根を伸ばして茎を伸ばして…それでようやく花を開くの。それぞれの個性溢れる花を開くの。だけど、長い間その姿を保つことは残念ながらできないの。花は少しずつしおれて、枯れていくの。ゆっくりとね。だから花は努力して消えていく時間の方が、花を咲かしているときよりもずっと長いの。だからこそ花は綺麗なの。健気で儚いから…。たとえ美しい花じゃなくても、美しいと感じてしまうわ。私はどの花も美しいと思うけどね—————』
フームの言葉を思い出した。
昔、まだしゃべれなかった赤ちゃんの時の会話—————
「…こんなに…すぐに枯れてしまうの…?」
この世のお別れ時間もないままに?
花は、枯れていくからこそ、〝生きている〟。
だけど、こんなにすぐに枯れ落ちてしまったら、まるで造花みたいだ。
捨てられた造花みたいだ。
「なんでだろう?どうして?」
一輪の枯れた花を、カービィは折れないようにそっと持つ。
ヘタリと力を失った花は、死んでいた。
「さっきまで君は、あんなにも大輪で咲いていたのに…」
白くて無垢な花びらを、美しく—————
パリーーーーン!!!
「!」
すぐそばで何かが割れる音が聞こえた。
さっきの食器の音とは違って、高く澄んだ音。
カービィの心は静かだったので、そこまで驚きはしなかった。
チェストに置かれた花瓶が独りでに割れた。
もちろんカービィは触れていない。
物音も花瓶が落ちるほどまでは立てていない。
床にも落ちていない。
本当に、その場(チェストの上)で割れたのだ。
真っ二つに。
そして、煙のように消えた。
「え!?」
これはさすがに驚いてしまった。
割れた破片も何もかも、花瓶そのものが消失したのだ。
それだけでは終わらなかった。
チェスト本体も、蜃気楼のように消えた。
「えぇ!?」
踊り場に置かれていたものは、すべて消えてなくなった。
あまりにも唐突のこと。
しかも、物理を無視している。
トリックではなく、本当に消えた。
「なんで!」
焦ったカービィの手には、もう花はなかった。
「物が消えていく・・・・?」
ありえない出来事に、しばしカービィは沈黙してしまう。
この空間の摂理は、綻びてきている。
まだカービィは気づいていない。
この空間のものは、全て—————
偽物—————