二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 星のカービィ 幻想の魔筆  ♪参照500突破♪ ( No.164 )
日時: 2011/06/19 13:55
名前: 満月の瞳 (ID: A2bmpvWQ)


始まりは、そう、あれだった—————

屋敷の中から聞こえた、けたたましい稲妻のような騒音。
その時僕ちんは外にいて、びっくりして様子を見に行った—————




「こっちに来ちゃ駄目っ!グリル!!」

ドロシアの悲鳴のような叫び声。
扉を開けた向こうには、大河のように広がっていく、絵具。
叩き壊された、キャンバス。
引き裂かれた、無数の絵。
圧し折られた、調度品。
潰された、家具。
今まで見たこともないような、ドロシア。

嵐の後のような、部屋の惨状。
一体、何が起こったのか、僕ちんはとっさに判断することすらできなかった。
ドロシアにあわてて駆け寄ろうとしたが、ドロシアの叫びに引き止められ、硬直する。

何が起こったのだろう。
この『箱庭』には僕ちんとドロシアしかいないはずだ。
誰がこんなことを。
誰がこんなひどいことを。
ドロシアが描いた絵を。
綺麗な部屋に。
絵具の海は、ほとんど部屋全体に広がっていた。
強い粘度に、無残に大量の紙が、不気味な色を染み込ませていく。
たくさんの色彩が混ざって、黒く、黒く、くろく、クロク。

「ド、ドロシア」

「駄目!来てはいけない!ここから離れて!今すぐに!早く!」

血相を変えたドロシアの態度に、僕ちんは驚愕しざるを得ない。

「来てはいけない!お願いよ!お願い!!」

カリカチュアサイズされたの海の上、ドロシアは必死に僕ちんに懇願している。
体が激しく震えている。
何かにおびえているのか。
表情は崩れ、瞳は焦点が合っていない。

「早く逃げて…!逃げて…!じゃないと私…私…!!」

でも、手伝わないと。
こんなにも荒れちゃってるんだから。
掃除しないと。
僕ちん。
役に立たないと。
「どうしたの?」って聞きたいけど、言葉にならない。


「…ドロシア…—————っ」

ドロシア、どうしてそんなにおびえているの?

口を動かして聞こうとしたけど、出来なかった。







「貴方を殺してしまうっっ—————!!!」









ドロシアの絶叫。
僕ちんは驚きに目を見開く。


殺す?

僕ちん、を?


それと同時に、〝ドロシア・ソーサレス〟の人格が、消失した。



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「かっ」

喉からそんな声が漏れた。
最初は、誰の声かと思ったが、すぐに自分の声だと気づいた。
こんな低い声、僕ちんが出してるの?

体が、やけに熱い。

僕ちんは、自分の丸い体を見下ろしてみた。

あ、れ?

赤い。

なんで?

血?

あ、なにこれ。

なにか、ささってる。

なんだろ、これ。

ぬけない。

いたくない。

なにもかんじない。

あつい。

あれ?

さむい。

なんだか、さむくなってきた。

つめたい。

ちが

ちがとまらない

どうして

つめたい

きずがつめたい

こごえる

かちかちに

こおりついていく

めのまえがくらい

ああ、そうか、えのぐ

どろしあの



みたい、な

どろしあ

ぼくちんのだいすきな、どろしあ

どろしあ

どうして

ないているの

なかないで

あれ

どろしあ

どろしあってふしぎ

なきながらわらってる

でも、わらっているどろしあのほうが、すてきだよ



だいじょうぶ

ぼくちんちょっとつかれちゃっただけだから

すこしきゅうけいしたら、そうじしてあげるね

どろしあはえをかいて

どろしあのえがぼくちんはだいすきだから

だいじょうぶ

ぼくちんはげんき

とってもげんき

でもちょっとねむいかも

からだがおもい

おもい

おもい

オモイ

ちょっとねむくなってきちゃった






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「アハハ…アーハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」




機械のような狂った笑い声が聞こえる。

遠く。







「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」











「あ…—————ああ…いや…いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」












二つ分の叫びが、聞こえる。