二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 星のカービィ 幻想の魔筆 ♪参照600突破♪ ( No.192 )
- 日時: 2011/06/27 20:07
- 名前: 満月の瞳 (ID: A2bmpvWQ)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode
第八楽章 呪縛の狂想曲
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「おかしい…」
カービィは、冷や汗を流しながら、脳裏を駆け巡る疑問を呟いた。
星の戦士は、迷宮のように広い屋敷を探索している。
その間、数多くの戦いをしてきた。
例えば、食器の破片や刃物の群れが飛んで来たり、あるえない爆発が起こったりと、まるで意図的にカービィを攻撃するために仕掛けられていたようなものばかりだ。
しかし、それは全て、〝仕掛けられていた〟ものばかりによる攻撃だ。
誰かが直接手をくわしに来たということが一度もない。
それはまだいい、だが—————
「なんでこの屋敷のものが消えていくの?」
さきほどみた花瓶のように、家具や調度品…そして部屋までもが消失してきている。
さきほど大広間一室が急に、ブラックホールに吸い込まれるように、綺麗に消滅したのだ。
あわてて出ていなかったら今頃カービィは…—————
そう考えるだけでぞっとしてしまう。
そうして、何らかのものが少しずつ消滅してきているのだ。
「普通じゃないよねこれは…」
ここは4階。
だいぶ上のほうまで来た。
外から屋敷を見て、およそ5階ぐらいの高さだから—————
「やっぱり…上から一番気配を感じるね」
カービィは、眉間にしわを寄せ、一生懸命何かを考えている。
「皆にひどいことした奴は、たぶん上にいるはず…ボクに攻撃を仕掛けてくるのもたぶん奴…だけど…なんでものを消す必要があるのかな?」
この時点で、まだカービィは気が付いていない。
物などの消失は、意図的に行われていることではないことを—————
「でも…まあなんだかよくわからないけど!行くしかな…—————」
行くしかないよね、と言いかけて、言えなかった。
「およ?およおおおおおお!?」
カービィは、何が起こっているのかわからないという声を上げる。
足が廊下の床についていない。
体が不自然な力で浮かされている。
しかも、どこかに吸い寄せられるように、カービィは後ろ向きに廊下に引っ張られていた。
客観的に見て、見えない力に運ばれている感じだ。
「ななななななにっ!ちょちょ、ちょと!?」
後ろ向きで振り向けないせいもあり、カービィはパニックになっている。
しかし、そんなことはお構いなしに、謎の力は容赦なくカービィを、青色の扉の部屋の中に投げ込んだ。
「うわぉ!?」
投げ込まれたカービィは、抵抗するまもなく、重力に従って落下する。
不意に、ドボンという、重くて大きい音がした。
「つ、つめた…ゴボッ!っぷ!?」
冷たい感覚が、全身を包み込んだ。
体が思うようにうまく動かせない。
息が—————できない。
「(えっ!?水!?)」
そこでカービィは、自分が水の中にいることに気付く。
そう、ここは風呂場だった(しかも超巨大な)。
あまりに突然のことで、自分はいったいどこにいるのかわからないカービィは、とにかく自ら出ようと体を必死にばたつかせる。
「!?(痛い!しみる!)」
閉じていた目を開けたら、とてつもない刺激を感じ、思わず目を閉じてしまう。
どうやらこれは泡風呂のようだ。
傷口にもしみて、かなり痛い。
余計に早く出たくなり、浮き上がろうとするが—————
体が動かない。
否、動くは動くのだが、何かに押さえつけられれており、上に浮上できないのだ。
「!?」
更に、その見えない力は逆にカービィを、風呂の水底に引き込もうとしているのだ。
「(やばいよ!早く出ないと…!)」
だんだんと息が持たなくなり、苦しくなる。
カービィの抵抗もそれにつられて、少しずつ弱くなっていく。
見えない力の力が、やけに大きく感じる。
「ゴボッ…(息が…もたない…)」
肺が焼けるように痛い。
その痛みで、意識が途切れそうになってしまう。
このままでは溺死だ。
「(ああ…ボクは…)」
皆を救えないまま、ここで死ぬのか。
戦いで死ぬのではなく、溺れ死ぬのか。
なんて情けないのだろう。
なんて馬鹿なんだろう。
なんて間抜けなんだろう。
「(ボクは…)」
こんなところで—————
『馬鹿もん!ここであきらめるのかぞい!?』
意識を手放す直前に、カービィの心の中で声が聞こえた。
それは、よくばりでわがままだけど、本当は誰よりも仲間思いの…デデデ大王の声。
『ここで死ぬのか!?惨めすぎて笑えるぞい!星の戦士が風呂場で死んでどうする!』
「(だって…)」
『だって言うな!言い訳考えるくらいなら!ここでの挽回考えろ!』
「(ばんかい…?)」
『そうぞい!わしもお前に勝つために、数多くの挽回策を練ってきたぞい!負けていたとしても!それを覆すことは大いに可能だぞい!』
「(…)」
『さあ!死の先刻よりも前に、相手の喉笛にかみついてやれ!カービィ!』