二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 星のカービィ 幻想の魔筆  VSグリル 開幕間近! ( No.202 )
日時: 2011/06/30 17:18
名前: 満月の瞳 (ID: A2bmpvWQ)


「うるさいっ!!」

グリルが激高した。

「え?」

カービィは突然の高い声に、少し身を震わせる。

「ドロシアは悪くない!悪くないんだよっ!」

「え!?」

「仕方がないんだ!仕方がなかったんだよ!これしか…!」

「…じゃあやっぱりどろしあって人が…」

「うるさいっ!!ドロシアは悪くないんだ!悪いのは—————」

「ねえ!その人がプププランドやプププランドの皆にそんなひどいことをしたの!?」

カービィは、真実をグリルに問い詰める。

「うるさい!うるさい!黙ってよ!」

「教えて!どろしあがそんなことをしたの!?」

「うるさああああい!!!」

カービィの視界が一瞬だけ、まぶしく点滅した。

「うあっ!」

鈍器で殴られたような鈍い音とともに、カービィは廊下まで一気に弾き飛ばされる。

「きみが…きみが『ここ』にいるから…きみが『ここ』にいることがいけないんだ!消えて!今すぐ!!」

カービィは、衝撃でくらくらする額を抑える。
薄く皮が破れて、血がにじんでいた。
正面には、どこからかとりだした、稲穂色のホウキを片手に持ったグリルが、震えながら立っていた。
カービィはどうやらあのホウキで殴られたようだ。

「そうしなかったら今ここで僕ちんがぶっ殺してやる!!!」

グリルが震えているのは恐怖や不安ではない。
怒りに打ち震えているのだ。

激情を抑えきれておらず、今にもホウキを取り落してしまいそうだ。

「…どうして!?どうしてポップスターのことを〝仕方がなかった〟で終わらせるの!?」

カービィは叫んで、グリルに訴えかけた。

「なんで!?みんなが絵の中に閉じ込められて、そこらじゅうグチャグチャになっちゃって!ボクたちが今までずっと過ごしていた思い出を!
どうしてそんな一言で終わらせられるの!?なぜ!?どんな理由があったとしても!そんなことしちゃいけないんだ!」

絵画の中に閉じ込められて苦しんでいた皆。

そこらじゅうグチャグチャに汚されたプププランド。

どれも大切で、かけがえのない存在。

「ボクは皆とプププランドを救いに来たんだ!!」

カービィは凛とした強い瞳で、そう言い切った。















じゃあ       きみは        コロスのか


「思い出…?何言ってるの?」

カービィははっとした。
グリルの表情が、大きく変わった。

泣き出すことを必死でこらえている。

緑の瞳は、悲しく潤っていた。
唇を噛んで、カービィを今まで以上に睨み付ける。

カービィという存在を憎んで、憎んで。
何もかもぶち壊してしまいたい、そんな感じでグリルは佇んでいた。

「僕ちんだって…救いたいんだよ?ドロシアを救いたいんだよ?」

「え…」

「それをきみは邪魔するの…?それをきみは妨害するの…?」

「グリ…」

「僕ちんの名前を気安くよぶなあ!!」

グリルは、ホウキを構えた。
狙うのは、カービィ。

「きみに〝ドロシア〟の何がわかるんだよぉ!わかったように言ってんじゃねえよ!ふざけるな!僕ちんだって…僕ちんだって…!僕ちんだって救いたくて守りたいものがあるのに!!それをきみは悪いことみたいいうのか!正義のヒーローぶってんじゃねえよ!正義のヒーローの行いは全て正当とか思いあがってんじゃねえよ!!だったら悪者はどうなってもいいのかよ!!そっちの気持ちは何一つ考えないくせに!!何も知らないくせに!僕ちんと〝ドロシア〟がどんな思いで…!!」

グリルの声は、ほとんど泣いていた。
哀れだった。
悲しみをギュウギュウに詰めたからだで、叫んでいるようなものだ。
爆発寸前の爆弾のように—————

「君は…」「きみは殺すの?」

カービィは何かを言おうとした。
しかし、できなかった。
グリルの氷のように冷たい言葉が、遮る。

「きみは、殺すの?」

「え—————」

「殺すの?ドロシアを…」

「…」

「させない!絶対にさせない!」

グリルは、ホウキにまたがった。
戦闘態勢だ。

「そんなことするきみは、僕ちんが殺してやる!もう逃がさない!殺してやる!」

「…」

どうやら、戦うしかないようだ。
カービィは正直、戦いたくなんてなかった。
今にも、悲しみに押しつぶされてしまいそうな魔女と—————
戦いたくなんて、ない。
でも、戦わなければ、殺される。

救えない。

彼女は、いったい何を救いたいのだろうか。
〝ドロシア〟のことだろうか…—————

「ヘイヘイヘーイ…」

「!」

グリルの口癖のような言葉が、カービィの記憶をよみがえらせた。

自分の、親友を—————

「最後にもう一度だけ、名乗ってあげる…」

グリルは、邪悪な笑みをつくり、カービィを宙から見下ろす。

「僕ちんはグリル!星の戦士カービィ!おまえはここで僕ちんに倒されろ!!」





『カービィ。僕はね。力が欲しいんだ。もう誰にも、大切物を奪われたくないから—————』

ずっと昔の親友の言葉を思い出した。

「(ああ、そうだね)」

ボクは、皆が幸せでいられるように、救えるような力が欲しいな。

「ボクは星の戦士カービィ!!いくよ!!」




VSグリル 開幕—————