二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 星のカービィ 幻想の魔筆  グリル戦ラスト間近! ( No.230 )
日時: 2011/07/04 20:29
名前: 満月の瞳 (ID: A2bmpvWQ)


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あたり一面、煙に包まれていた。
ブロック落下の衝撃が強すぎたのであろう、結界空間にひびが入っている。

これが、今のグリルの出せる限界の魔法だ。

ビルのようにでかいブロック。
しかもこれを浮遊魔法で操ることは、かなりつらい。
魔力の消費が桁違いであることが故、体力消耗も桁違いに激しい。

「ゼェ…ゼェ…!」

グリルの荒い呼吸が、ブロックから少し離れたところで聞こえる。
魔力をかなり消費したのか、ホウキの操作はおぼつかない。
フラフラと、宙の低いところでふらついている。

「ハァ…ハァ…!」

ブロックは陥没している。
あそこにいたものは、間違いなく潰されて死んだだろう。

そう、カービィ。

カービィは、死んだはずだ。

「は…ははは…」

感情のこもっていない笑い声を小さく発して、グリルは地面に足をつける。

「!…」

足にうまく力が入らない。
カクンと、へたりこんでしまう。
グリルの体力はもう限界だった。
そもそも、この大規模な空間を作ることが、かなりの負担だったのだ。
でも、屋敷で戦うわけにはいかない。
ドロシアがいるから。
今も閉じこもって—————

「やった…?」

ホウキを杖のように使い、何とか立ち上がる。
ゆっくりと、おぼつかない足取りで、カービィの死を確認しに行く。

「…ドロシア…—————」

これで

これでカービィが殺せていたら。

ドロシアは殺されない。

「待ってて…—————」

煙が充満していて、詳しくは確認できない。
ブロックはカービィの何十倍も何百倍もある。

「これで…終わらせるからね…」

さっきの魔法は、必殺のとどめの一撃。
あれが決まっていなかったら—————

星の戦士の能力は未知数だ。
おそらく、この空間で戦っていなければグリルに勝機はなかっただろう。
実力でいったら、星の戦士のほうが強い。

だから、グリルは笑っているようで、必死だった。

勝てるかどうか計算して。
魔法もすべて、ブロックの扱い方も、策を練って—————

あの攻撃が、グリルのできる最後のことだった。

「僕ちんは…僕ちんは…負けない…!」

グリルはブロックのもとまで来た。
カービィは、潰れ死んだだろうか。
これの直撃を喰らったら、肉片も残らないだろう。

「…」

死んだな。

カービィの気配が読み取れない。

これは、潰れ死んだ。

「…僕ちん…人殺し…したんだ…」

ほうけたように、そうつぶやいた。

「ダメ!僕ちんは誓ったからいいんだ!」

ドロシアを守るためなら、誰だって排除するって!
しかし、殺した経験は初めてだったので、ショックが隠せない。

殺した。
でも、殺しを悲しんではいけない。
これで、ドロシアを守れたんだから—————

「ドロシア…これで大丈夫だよ…。アナタを殺そうとするやつは、僕ちんが殺してやったから…心配しないで…僕ちんは大丈夫…」

その言葉だって、震えていた。

覚悟が足りなかったわけではない、誰だって、初殺しは恐ろしい。

自分が殺人者と身をもって知ることになるから。

グリルは、ブロックを消去しようと、魔法陣を呼ぶ。

その刹那。

「大丈夫!まだ君は人殺しじゃない!」

「っ!?」

ありえない声が聞こえた。

殺したはずの。

カービィの声。

「だ…らあああああああああああああぁぁぁぁ!!!」

雄叫びと共に突進してくるカービィ。

なぜ生きている?
殺したはずなのに…?
かわされていた…!?
動けなくしたはずなのに…!?
どうして…!?

グリルは、一瞬の思考で考えた。

ありえない、と思った。

もう、カービィの攻撃はかわせない。

魔力はもうないに等しい。

それに、体がもう…—————




「ああああああああああああああああああああっ!!!!」



カービィの突進を、モロにくらう。

グリルの体は跳ね上がる。

ホウキが衝撃で圧し折れる。

意識が途絶えかける。

視界が暗くなる。

痛い。




「ボクは!負けないっ!!」


はは、さっきの僕ちんと同じこと言ってる…

ホント…馬鹿みたい…

ばか、みたい…





ドロシア…




ごめんね…—————











グリルの脳裏には、ドロシアがいた。