二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 星のカービィ 幻想の魔筆 VSドロシア開幕間近! ( No.274 )
- 日時: 2011/07/13 18:37
- 名前: 満月の瞳 (ID: A2bmpvWQ)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode
いま なんて いった ?
ころして ?
こ ろ し て ?
ボク に
ボク に
ボ ク に
ボ ク に
蹂躙—————充満した邪悪なエネルギーは、誰からでも視認できるほど、膨れ上がっていた。
無機質な床に、猛毒を帯びた蛇のような形で、這いずり、のたうっている。
肝心のドロシアは、蛇の群れの中、ただ一人君臨していた。
もう殺戮衝動は、気配や気体でも抑えられず、液状と化している。
ドロドロの…腐敗し、変色した、絵具のように—————
これが、あの美しい魔女の、現状。
「やだよ…やだよぅ…ドロシア…!!いやだよぅ…!!」
グリルは、とうとうバランスを崩し、耐えきれなかった涙を心情のまま流し、膝をつけるように倒れ、頭を抱える。
嗚咽を、もらして。
痙攣するように、震えて。
カービィは、ただ絶句していた。
目を見開いて、時が止まったように。
動かなかった。
動けなかった。
想像すらつかないことを、言われた。
しかも、それは何よりもカービィが恐れる—————
殺し。
「貴方は、正義のために悪者を排除すべき。だから…早く—————私を殺して…」
ドロシアは微笑んで、カービィを手招きする。
カービィは、動けない。
反応することすら、不可能だった。
「貴方の大切なものを奪う存在にならなければ、貴方はこんなところまで来ないでしょ?それに、私を殺そうともしない。あなたはとても温厚な性格だと聞いているから…」
うふふ、とドロシアは、シンプルなドレスの長い袖で、口元を隠しながら、気品に笑む。
依然として、猛毒の殺気は、絶えない。
「貴方には私を殺す権利がある。でしょう?貴方のお仲間を私の魔法で閉じ込めて、私の魔法で貴方の故郷を、グチャグチャにした」
ゆっくりと、なめらかな動作で、ドロシアはドレスのポケットに入っていた、魔法の絵筆をとりだした。
そして、静かに投げた。
カランカラン…
絵筆はカービィの足元に、弧を描き、滑るように落ちた。
乾いた音だけが、空しく響いた。
これによって、ドロシアは完全に、無防備になった。
「私はその魔法の絵筆がないと、魔法が使えない。嘘ではないわ。私は絵画をつかさどるもの。筆がなければ絵画は生まれない。それは私の動力源でもあるの。あ、いいえ…違うわ。これは私の魔力の源。それを壊しても、私は死ねない。死なないわ。うふふ…私としたことが、とんだおかしい発言をしてしまったわね。まぁ、ご愛嬌と思って受け取ってもらえると嬉しいわ」
おそらくは、カービィに話しているのだろう。
しかし、独り言にしか聞こえない。
現に、カービィは硬直している。
「さぁ、これで私のこと殺しやすくなったわ。星の戦士様—————」
小鳥のような、美しいソプラノの声音は、恐ろしい言葉が次々と出てくる。
「早く、殺して—————」
ドロシアの声はやつれてない。
むしろ、凛としてよく通っている。
そんな声で、死を望んでいる。
処刑されることを焦がれている。
痛いほど。
苦しいほど。
辛いほど。
泣きそうなほど。
叫びそうなほど。
愛しいほど—————死を。
死を、願っている。
願いすぎている。
ドロシア・ソーサレス。
「な…んで—————」
カービィは、ありえないと主張するように、体をブンブン降る。
否定するように、激しく。
「どうして……!!」
カービィは声を張り上げて、叫んだ。
「どうして死にたいとか言うんだよぉっ!!!!」
真下を見た。
足元には、色とりどりの不思議な文様が、水玉模様で描かれた、一本の筆がある。
その筆は
泣いているのか
ゴチャゴチャに混ざったマーブルカラーの色が、涙のように、筆先を染めていた。