二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 星のカービィ 幻想の魔筆 ♪参照100突破♪ ( No.60 )
日時: 2011/05/19 20:03
名前: 満月の瞳 ◆zkm/uTCmMs (ID: A2bmpvWQ)

第三楽章 人々の夜想曲ノクターン


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キッチンは、無地のキャンバス。
食材は、色とりどりの絵の具。

ドロシアはそうやって料理を、作り出す。


「ドロシアァァ!ねえねえねえねえねえ!!」

朝昼晩と、僕ちんはこんなふうにドロシアに注文する。

「僕ちん今日はねぇ━━━━━甘い甘い甘〜いホットケーキが食べたい
!」

「はいはい、了解しました」

わがままな僕ちん、だけどそれに応えてくれるドロシア。

「グリルはほんとうに甘党ね」

「甘いの大好きだもん!」

「虫歯になるわよ」

「僕ちん歯磨きには丹念に丹念に、入念に入念に、美しさ清潔さ全てを重視して磨いてるから!」

「ウフフ…それはまあ随分な自信ね」

「虫歯は痛いから嫌だもん」

「それはそうね。じゃあ今日に昼ごはんはホットケーキね」

「たっぷりシロップだよ!たっぷり甘いのを!!たっぷりね!!」

「わかりましたわかりました」

ドロシアは楽しそうに笑う。
僕ちんも嬉しいから笑う。
そんな日常。



絵の具が食材と言っても、実際は絵の具を食べるわけではない。
ドロシアは描いたものを実体化できる。
料理だって、ドロシアにとってはお茶の子さいさいで、サラサラと描いて実体化させてしまう。

最初は結構…否、かなり抵抗があったが、今はもうそんなこと全くもって気に留めていない。
キャンバスに描かれたおいしそうな料理が、実際に僕ちんの目の前に形を持って現れる。

「感動しちゃうね!」

しかも、温かいスープなどは、ちゃんとした温度で出てくるのだ。
すばらしすぎる。
同じ魔女でもここまで力が違うなんて…。
そう思うと、少しだけしょぼんとしてしまう。



昼ごはんができた。
屋敷のテラスの白いテーブルクロスがかかった丸テーブルに、銀食器とシロップ壺や、注文通りのこんがり狐色に焼けたホットケーキに、高級そうな紅茶、花瓶などで飾られている花。
あまりにも豪華すぎる。

「いっただきます〜!」

「おあがりなさい」

銀色のフォーク(もちろんこれもドロシアが描いた)を片手に、おいしそうに盛られたほかほかのホットケーキに、下品じゃない程度の勢いでかぶりつく。

「むしゃむしゃむしゃむしゃもぐもぐもぐもぐもぐもぐ…」

「グリル、そんなに一気に食べてたら…」

「ゲッ、ケプッ」

喉に詰まってむせる。

「もう、そんなに焦って急いで食べてもホットケーキはどこにも逃げないわよ」

「ゲホゲホっうんにゃ、だいじょぶ」

むせたまま紅茶を飲む。

熱い!

…けどおいしい。

「ふィ〜」

僕ちんが使うには、豪華すぎるティーカップ。
いざ使うと、結構緊張するものだ。

「ドロシア!このホットケーキも紅茶もとってもおいしいよ!」

「ありがとう。だけど…甘すぎなかったかしら?」

「ううん!僕ちんにはちょうどいいほど良い甘さだった!」

「そう、ならよかったわ」

「ドロシアは天才だね!こんなにすごい魔法が使えるなんて!」

「…そうかしら」

「そうだよ!すごいよ!僕ちん感激!」

「ウフフ…そういわれると照れちゃうわね」

『箱庭』の空は、今日もいつもどおりの青空。
庭には花々や木々が、風に揺らめいている。
僕ちんたちも、いつもの日常を歩んでいる。
でも、その一つ一つがキラキラにきらめいて、幸せな気分になれる。

「なんだかグリルの食べっぷりを見てたら、こっちもお腹がすいてきたわ」

「エヘヘ」

「さてさて私も…」

パクッ

「…」

「…」

「…」

「…」

「…」

「…ドロシアどうしたの?」

「…ちょっとお砂糖を想像しすぎたかしら…」

「あ、甘すぎたとか?」

「…そうみたい…」




甘すぎたホットケーキ。
でも僕ちんとドロシアは、苦笑をしつつも全部食べた。
楽しいランチタイム。
…やっぱり僕ちんって、甘党すぎるのかなぁ…。




だれかとこんなふうに食事するのは、この屋敷にきてドロシアに会ってからが初めてだった。
ドロシアとは、毎日いつも一緒に楽しく食事する。

だけど、昔は違った。
家ではそんなふうにできなかったし。
旅でもできなかった。



いつだって僕ちんは…━━━━━━━━━━━━━━━━━━




いけないいけない、また思い出しちゃうところだった。
感傷に浸るのは好きじゃないし。
考えちゃだめだ。


今、とっても幸せだ。

だって



ドロシアがいるから。