二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: LILIN ( No.11 )
- 日時: 2011/07/17 17:48
- 名前: そう言えばこしょうの味知らない (ID: PDV9zhSY)
目元がまだ開かない。頬には冷たいがあたっている感覚があり、鼻で息を吸ってみると錆びた鉄の香りが眠気を徐々に取り払う。
誰に殴られたのか、腹は大きめの分銅を乗せたように重く、刺激が鈍い。
「あいいたた……どこだろここ」
完全に視界が戻った頃、俺はようやく自分が車に乗っていることに気付いた。しかし、ここは真っ暗で何も見えない。ここでは嘘のように視界は役には立たないようだ。何かで覆っているのか側面の窓が見えず、もちろんそこから光も入らない。唯一の光源は運転席前の大きなフロントガラスのみ。
「&W’(’&$(&&’&’%$(」
運転席の男が言う。
「……あ、あの〜英語しか分からないんでマブシテ語は分からないんだけどな……」
「$#”)&))」
続いて隣に座っている男がそれにこたえるように。
「$#”)&))? あっそう」
車内には俺以外に5人の男がいる。前二人に後ろは三人。後ろに挟むように座っているそいつらは……やはりアメリカ人ではない。顔のつくりがどことなく某バラエティーに出てくる東洋人にそっくりだ。まぁ、俺も東洋人の顔をしているから見慣れていたりする。
「……19世紀あたりだったかな。たしか、インドがイギリスに植民地化された。そのときインド人は英語を常用語として学んだんだけど。マブシテスタンにも波及していったはずなんだよね。……誰かひとりくらい話せる人いないの? おばあちゃんから学ばなかったかい?」
はぁ。ため息が聞こえた。隣の男のものだようだ。すると、その男は饒舌に語りだした。
「仕方ねぇ。親密になると作戦に支障がでかもしれんが……」
「おや、やっぱし居たのね」
「あぁ、一応話せる」
「……他は?」
「日本語なら話せる奴はいる。俺の英語よりそっち聞いたほうがいいか?」
「……いい、話せないから。こんな顔してるけど……仲間の人が俺と話せって?」
「あぁ、そうだが……みんなお前に同情しているのかもな」
「同情されるって拉致しといて?」
「みんな初めは遠慮してたよ。なぜなら……」
そこで男は言葉を切り、俺を見つめる。その眼は薄い黒味ががって、鋭い。どこか憐れんで、それでも他人ごとではないと怯え警戒しているそんな眼に見えた。