二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: LILIN  ( No.12 )
日時: 2011/07/17 19:22
名前: そう言えばこしょうの味知らない (ID: PDV9zhSY)

「お前、両親が居ないんだってな。こんな広い米国の中でお前は一人で生きている。それが俺たちとは比べ物にならないだろうが俺たちも同じだ、俺は3歳から両親が消息を絶って、見知らぬばっちゃんに育ててもらった。そこで学んだ英語だ」
「……社会の裏は怖いね」

俺の情報がそこまで漏れているのと、簡単に肉親が蒸発する世の中であるということが。

「てか作戦前にそんな感情移入してたのね」

やっぱド素人。さしずめ再度教室に入ろうとしたときおめーが向けてきたのは銃じゃなくラップの芯にちげーねぇ。

「しかしよぉ、なんで戻ってきたんだよ、教室に?」
「うん……好奇心かな?」
「んなぁ……アホかっ! お前は。死んだかもしれないんだぞ」
「これからその予定は?」
「いや、ない。目的の場所まで連れてくだけだ」
「そっか。まぁ、大体確信はあったから」
「確信?」

そう、ボブがトイレの窓から立ち去る前に言ったこと。

「俺をとらえた時間、誰もいなかったのはあなたたちが?」
「ふつう誰もいないだろう。俺たちも不思議だったんだが、なんであんな時間までいたんだよ、“お前”」

男が真剣なまなざしで疑問を投げかける。それには少し詳しく応えようと思う。

「……俺ともう一人でいたんだけど、そのもう一人が遅弁とか言い出して昼食を放課後食べ始めて、俺はそれで足止めくらって最終的にあんたらが突入してくる時間になったというね。それからあんたらから逃げるためにひとまず女子トイレに逃げ込んで、そこで別れた。さっき確信があるってのはその時生まれた推測なんだけどね、あんたらに連れ去られてようやく確信になった。」
「……ほう」
「そいつは立ち去る前、俺に落ち合おうと言ったんだ」
「……それが?」

そこが重要なんだ。多分俺が思うにボブは確実に今回のことを知っていた。

「その時そいつは場所を言わなかったんだ、場所を選ばない落ち合いなんてない。学校はあまり大きくないから二人の間は大きく空く訳じゃない。きっと最寄りの公園といってもいいはずなのに彼は敢えてケータイを指示した」
「場所なんて単に忘れていただけじゃないか?」
「ならケータイでの連絡も思わないはず」
「まぁ、そうか」
「ケータイは遠くの人と話すもの。彼は俺が遠くに行くと知っていた」

そしてそれは現状に合っている。俺は学校から離れたところへ連れられている。

「たのむ! これから掛かってくる電話、俺にとらせてもら……」




---------ラブソティーインブルーのメロディー。

間違いなく、俺のケータイの着メロ。でも入っているはずのポケットからでない。どこだ、落としたのだろうか? どこに? 慌てて下のマットレスを覗き込む。

しかしメロディーはもっと上で鳴っているようだった。見ると助士席の男が……それに出ようとしている

「ま、まってくれ!! 俺に、俺に代わってくれ!!!」

それに飛び込むように動いた俺の体を横にいた3人が押さえつける。
急いで、あの男を見て俺はのたまう。

「放せって!! 電話にでさせてくれよ!!」
「……わるいな兄ちゃん、それはできない」

そういって男たちは力を弱めない。強く、何かに縋るようにして懸命に俺を止める

「たのむよ!! 話がしたいだけなんだ!!」
「やめろっ!」

男が鬼のような形相で俺をにらみつける。それに怯みながらもなんとかケータイに手を伸ばす、もう少し……

「いいか! さっき聞かしてもらったお前の推理はおおよそ正しい。 シナリオ通りだ。お前の友人はお前を裏切った、確かにそうだ! だから、だから分かるだろう!! そいつが今、どんな状況に立たされているのかを!!」

男は叫び続ける、まるで自分に言い聞かせるように、精一杯の仕方なさを含ませて。

もう少し……その手を俺は助士席でケータイ男に弱く手を伸ばしている。

「そいつはこの事件の確信犯とならなければ、そいつの家族が……俺たちと同じになるんだ!! 二度と、ぬくもりを感じられなくなるんだ!!」

まだ男は叫び続ける。俺の胴を縛り付けながら。縛られる俺はさっきまで冷静だった、落ち着いていたはずなのに。

まだ俺はケータイに手を伸ばす。抑えきれない怒りのままに。


                ○




「……え? なんですって? 言葉がわから……」

電話へそう弁解し続ける僕の目には涙が溢れかえっている。お腹がいきなり空になって何もかもなくなってしまう感覚に苛まれている。

「も、もう切りますよ!! それじゃぁ!!」

早く切ることにした。け、決して電話の向こう側で悲しみを嘆いている声が聞こえたからじゃないと自分にいい聞かせる。

「お電話だれからだったの〜?」

おかぁさんが電話の相手を尋ねに来た。

「知らない人だった」
「そう……あら? どうしたの元気ないで」

絞りだすように、それでいて誰にも聞こえないように……。

「ぼく……僕……最低だ」
「え? 何?」

ぶんぶん。首を横にふる。それから急いで台所へ向かった。

茹でているアルデンテが伸びきらないように…………。