二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: デュラララ!!×α ジャンル紙だったようです。良かったぁ…… ( No.7 )
- 日時: 2011/06/09 21:55
- 名前: 唄李 ◆Ua0yrvSvWg (ID: 8HTDhaI.)
第二章 クラスメイト×X=?
来良学園は、南池袋にある共学の私立高校だ。
敷地面積はそれほど広くないものの、限られた面積を最大限に利用したその造りは、在学生に決して狭さを感じさせることは無い。池袋駅から近いという事もあり、東京近郊の人間にとっては在宅で通える高校として近年人気が高まり始めている。偏差値と共に入学の難度も緩やかに上昇傾向にあり、直や同年度に入った帝人達は実に良い境目に入学することができたと言える。
高い校舎からは周囲の風景を一望できるが、眼前に立ちはだかる60階建てのビルが優越感を与える事を許さない。反対側には雑司が谷霊園が広がっており、都会の中心にありながらどこか寂寞とした雰囲気に包まれている。
この春から住むことになったマンションから迷う事もなく、あっけないほど簡単に終わった入学式を少し残念に思いながら、直は自分のクラスで簡単なHRを行った。
「平和島直です。」
「あの……他に何か言う事はありませんか?」
「いえ、特に何も」
別段暗い雰囲気でもなく淡々と、自分の名前だけを告げて席に座る直
自分の苗字に反応する人間がいるか気にはなったが、クラスの人間は反応することもなく直の方に注目していた
正確には兄と似た、直の顔の造形にだが……
「ねえ、あの人羽島幽平に似てない?」
「確かに、チョー似てるよね」
「兄弟かな?」
「え? でも妹はいたけど弟はいなかったよね?」
前の席の女子の小声が耳に入り内心眉を顰める直
スカートが嫌いと言う理由で、制服のオプションでついてくる男子の制服と同じ様なスラックスを穿いて来たことを後悔しながら机に突っ伏して寝たふりをする。
——絶対これ男子に間違われてるし
——つーか、兄ちゃんの顔の造形の良さは反則だし
——まあ、兄貴も性格をスルーすればモテるんだろうけど……
そのまま次の生徒の自己紹介を聞く
「竜ヶ峰帝人です。宜しくお願いします」
随分と印象深い名前のクラスメイトだった
一瞬、顔を上げてその男子生徒の方を見ようかと思ったがそんな気力もないように突っ伏したまま寝てしまった。
♂♀
同時刻、来良学園保健室
来良学園の保健室はそれなりに広く、ベッドが入口から三つ並んでいる。
その入口から二つ目、真ん中のベッドはカーテンが掛けられていた
「……あれだよな」
金髪の少年——紀田正臣は担任に頼まれ、保健室に来ていた。
入学式の直前に体調不良を訴え保健室で寝ている生徒に、プリント類を渡してほしいと頼まれたのだ。
そして、保健室に来てから預かったプリントの一点——その生徒の名前を見つめる正臣
「この苗字……」
そこに書かれている文字は
——折原希来里
だった。
と、その時カーテンの内側から声がした
「どうしたの? 保健の先生なら今はどこかに行ってていないよ。早くプリントを渡してよ、紀田正臣君」
その声は、とても綺麗な声だった。
陳腐でありふれた言い方をしてしまえば、聞く者に、『白い星が話しかけてきた』と錯覚させるような声。
それ程までに透き通り、心地よく澄み渡る響きだった。
まるで、その声の主の兄の様に——
そんな声を聞いて、一瞬動きが停止する正臣。
しかし、すぐに我に返り声のしたベッドの方へ歩いて行く。
カーテンの前まで来て、開けようか迷っているといきなりカーテンが開き、中から正臣と同い年くらいに見える実に綺麗な顔をした少女が出てきた。
一見すると病弱で気弱な印象があるが、比較的凛々しい顔つきをしており、容姿端麗という褒め言葉を見事に具現化したような存在だった。
「初めまして、ってところかな。私は折原希来里……って、それ見てれば分かるよね。一応、兄さんみたいな真似はしない予定だよ。安心してね」
微笑しながら一気に話す希来里
それを聞いて苦虫を噛み潰したような顔になる正臣
——やっぱり、臨也さん関係の人間かよ
——俺は、もうあっちに戻りたくないのに
そんな正臣の様子を見て困ったように笑う希来里
「そんな顔しないでよ。兄さんが悪趣味なのは中学の時からなんだしさ……。兄さんが家族の私もちょっとブルーなんだし」
「あ、ああ、そうだよな、ごめん……」
申し訳なさそうに正臣が謝ると、希来里は「良いって、さっきはブルーなんて言っちゃったけど兄さんの事は好きだからさ」とはにかんだ。
その時、希来里の後ろから電子音が三回鳴ったかと思うと途切れた
「もう来たんだ、速いなぁ……」
くるっ、と後ろを向いてベッドの上に置いている何かを取ってベッドに座る希来里
そしてその何か——携帯電話の画面を凝視しながら凄い速さでキーを押す
「何やってんだ?」
「ん? 兄さんの真似事」
正臣の質問に目線をそのままで答える希来里。
正臣にとっては、それだけでも十分だった
「えっと……俺、もう教室戻るから」
「分かった、カーテン閉めてってね。あとプリントありがと」
機械の様に言葉を紡ぐ希来里に背を向け、正臣は教室に戻った