二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

 ばか、すきなんだよ  ( No.2 )
日時: 2011/05/30 18:33
名前: 乙亞 ◆VaTW4xNXp. (ID: K75.VLwZ)

「あのさ、幾らオレが美しいからってそんなに見られても困るんだけど」
「……いや、別に貴方が美しいとかそんなん思ってないし関係ないですよ寧ろお前うざい」

 オレの目の前で淡々と言葉を並べるそいつはいちいち癪に障る人間だった。
 先週、いきなりオレやエスカバ、バダップの目の前に現れたと思うとすぐに間違えた等と騒ぎ出すこの女。
 しかも可愛くも不細工でも何でもない、平凡な顔立ちをしてやがる。だから余計にオレに指図するというこの女の行為がむかついて仕方がない、というかもう死ねばいいのに。
 はぁ、と短く息を吐き出して女——リンドウは此方を見詰めたまま動かない、というか動けないらしい。足元に何やら巻き付いている。大方、また何か失敗をしたのだろう。

「……何でそうなるのさ」

 呆れたように溜息を吐けばリンドウは悔しそうに此方を見てくる。うん、ゾクゾクするね。
 そしてぽつりと珍しく弱々しげな表情を浮かべてこういった。

「う、……あのね、やられたの」
「は?」
「……エスカに、やられました」

 あんのエスバカが。
 どう見てもリンドウの足元に巻き付いているものは縄だった。こんなもので縛り付けた挙句オレの目の前に置くなんて、——陰湿な嫌がらせだよな、よし、後で締め上げよう。
 頭の片隅でそう考えていれば、早く取って下さいよという声が聞こえてきた。

「それくらい自分でも取れるだろ」
「無理です、」

 ほら、とリンドウが又もや縛られている両手を見せるのでオレは思わずため息を吐いた。
 きっとオレの美しい顔は歪んでいるんだろう、こいつの所為で。
 その前にこいつをこの状態にさせたエスカバをどう罰してやろうか。ああでもエスカバにこんな芸当出来るはずがない。きっと手先が意外と器用なバダップに唆されたのだろう。

「……ったく、」

 仕方ないな、と呟いてオレは渋々と縄外しに取り掛かった。
 ——何でオレが態々直々に外してやってるか、気づいてるよな?

「ミストレーネ、」

 縄を外してやると、リンドウはにこりと笑む。
 気が付けば目いっぱいに、リンドウのかお。

「——好きですよ、貴方の優しいところ」
「……っばかじゃないの?」

 馬鹿で結構、とリンドウはオレから離れた。
 キスされた、と気付くまで5秒も掛かってしまった。



( ばか、オレも好きだよ。なんて、彼女は気づいてるのだろうか )






あとがき/
ミス→←ソウ
間違えた、という言葉の意味は行く時代のこと
この後ふたりは引き裂かれる、というね