二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 星のカービィ 星命の言葉 ( No.15 )
- 日時: 2011/05/29 20:25
- 名前: 満月の瞳 ◆zkm/uTCmMs (ID: A2bmpvWQ)
第一話 鏡の幻影
気が付いたら、目の前に巨大な鏡があった。
周りを金塊を取り付けられ、一つの世界をそのまま彫ったような、見事な細工を施されている。
鏡は、『僕』を映している。
ここは不思議な空間だった。
現実離れした、今にも砕け散ってしまいそうにもろい場所。
足元は水の上にいるのか波紋を生んでいる。
湖のような足場は暗く、闇色だった。
空も真夜中のように暗い。
月明かりなどはない。
それどころか何一つとしてない。
当たり周辺も真っ暗闇で、地平線すら見えない。
本当に周りが暗闇なら、自分の姿を確認できないはずだ。
なぜか鏡から神聖な光がポツリポツリとでている。
鏡は『僕』の前に浮いている。
ここはどこだろう。
そして、この鏡はなんだろう…。
どうして『僕』はこんなところに…。
「ここが『お前』の中間点だから」
「!」
誰かの声が聞こえた。
でも…どこかで聞き覚えのある声…。
いつもいつも聞いているような声…。
違う、いつも出している声…。
これは…
「『お前』の声…だろ?」
「え!?」
鏡に映った『僕』が陽炎のように揺らめいた。
そして…体が黒っぽい灰色に染まっている…『ボク』が映った。
姿かたちは全く同じ。
だけど…体の色と瞳の色が違う。
闇色の瞳が、『僕』を見据えている。
「誰…?」
『僕』の思考は疑問という二文字に埋め尽くされてしまっている。
「誰?それは変な言い方だな」
『ボク』は口元を歪めて、ニヤリと笑う。
「『ボク』は『お前』だ」
指を指される。
「え…?」
『あのこ』が『僕』?
一体なんなんだろう…
「そして『お前』は『ボク』だ」
「何を言ってるの…?」
『僕』は『僕』だけのものじゃないのか?
「『ボク』は『お前』の鏡なんだよ」
「鏡?」
「『お前』が光で『ボク』が影」
「…?」
「『お前』が天で『ボク』が地」
「なに…?」
「『お前』が陽で『ボク』が陰…つまり『お前』と『ボク』は反対で、鏡なんだよ」
『ボク』が『僕』そっくりに笑う。
「『君』が…『僕』の鏡…?」
「そう」
シャーンシャーンと、甲高い音が響く。
鏡がキラキラときらめく。
「はじめまして、『僕』」
『ボク』はそう言った。
『僕』は混乱してしまう。
「ね…ねえちょっと…意味が分かんないんだけど…『君』が『僕』?『僕』は『僕』じゃあないの?」
アタフタと、早口に言う。
すると『ボク』はため息をつく。
呆れているのだろうか。
「やっぱり『お前』じゃ駄目だな…本当に駄目だ…」
「?」
「どうして『ボク』はこんな奴の…!」
ギリリ…と歯を噛みしめている『ボク』。
深刻そうな表情だ。
「…まあいいや…もうじきそんな迷いも終わる…」
突然、空間が砂になるように消えていく。
ザア…と、解けていく。
「え!?ちょ、ちょっと!?」
鏡も消えていく。
もちろん『ボク』も消えていく。
そして『僕』も…
「あばよ…出来損ないのカービィ」
最後の言葉を聞き取って、空間は無に帰した。
光と影。
天と地。
陽と陰。
これが出会うはずのない鏡同士の、ファーストコンタクト。