二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ”絶望”と”希望”交わる世界で。    魔法・アンケ募集! ( No.117 )
日時: 2011/07/01 22:55
名前: 藍蝶 (ID: fjkP5x2w)
参照: やべ、アニキャラ男の娘しか興味なくなった……だと←

第10話 「歌姫という、使命感」


「気が、つきましたか?」

倒れていた春奈達が起き上がる。
口が切れてたり、髪の一部が赤く染まってたりと色々酷い事になっている。
が、刹那とリンは別に心配そうな顔など知りませんという無表情で、言葉だけである。

「あ……彩染様……」

瞼を薄く切られた葵が片目を開け、口を開いた。
無表情のまま、コクン、と頷いた。これが通常の刹那だと言える。

「この二人は?」

リンが未だ目を開かない男二人を指差す。興味が無いのかは知らないが、顔さえ向けようともしない。

「わ、私達が戦ってるの見て……二人共、兵士ですから助けようとしてくれたらしいんです。でも、モンスターが取り返しつかない位増えて……最初に倒されちゃった後私達が……」

カクカクと震える春奈。罪悪感くらいはあるのだろう。
それにしても、男二人は兵士らしいが、姿は似ても似つかない。
どちらとも桃色の髪色をしてはいるが、片方はライオンヘアーにゴーグル。肌が若干(という訳でもない)焼けているのに対し、
もう片方は低い位置でのツインテール。一瞬女かと思う程整った顔立ちである。

「……態々回復技使わなくてもいいよねぇ?刹那」
「いいえ、これだけ時間が経っても覚まさないという事は、相当重症な様です」
「僕の魔力は他国のヤツなんかにやんないよ」
「私も、そうしたいんですがね。仕方ないというか。……《清水治癒 −アクアリカバリー−》」

途端、二人の体を蒼白い光が包みこむ。
《清水治癒 −アクアリカバリー−》は治癒能力の高い治癒魔法。こういった技を刹那は少なからず持っている。
光が収束した時、二人は完治した状態で安定した呼吸をしていた。
そして、ゆっくりと目を覚ました。

「あ……れ?」
「此処……何処だぁ?」
「此処は此処です。お目覚めですか」

はぁ、と溜息を吐いて少し入れた力を抜く刹那。
それとは逆に、ハッとした様子になるツインテールのおん……男の子。

「お、音無さんっ!?御無事ですかッ!?」
「えぇ、大丈夫、大丈夫よ。怪我は少し痛むけど、日が経てば治りますから」
「良かった……歌姫が歌を歌えないなんて事になったら世界は終わるからな……」

歌姫。一つの世界に一人いるとある素質を持った娘の事を意味する。
10になると歌姫としてある場へ駆り出され、定期的に神へと祈りの歌を綴る運命を背負う事になる。
ただし、祈りの歌は自身の生を削る。
歌姫に選ばれた娘は遅くとも15にはその生涯を終えてしまうのだ。
だが、その歌を歌わないと神は暴れ狂い、世界ごと破壊へと向かわせる。
歌姫は”生贄”であり、世界と平和を繋ぐ手綱のような役目を果たしていた。
実際、3年間歌姫の素質を持った者が現れず、神は一時的に狂い、一般市民達はこうなったのである。
王宮仕えの侍女をしていた春奈は一年前、奇跡的に歌姫の才能を持ち合わせた娘として発見され、
神に使える姫として歌う事になった。
だが春奈は3年の穴を埋める為、より強力な魔力を持つ歌を歌わされる事になった。
結果、3年の穴は塞がったものの、春奈はその生涯を終える目の前まで来た事になってしまった。

「歌姫は歌を歌うのが仕事ですから、霧野さんや綱海さんよりずっとマシなものですよ?」

ニコッと何の引っ掛かりも起きないような笑顔。
春奈はその明るい性格で、誰からも愛されてきた。
だからこそ歌姫になったという事実に周りのショックが大きく、涙流す者もいた。葵もその内の一人である。
その上、春奈には能力の違う生き別れの兄がいる。母が違った為、能力が異なったのだ。
その兄とも顔を合わせられず死んでいくなど、辛いであろう。
それでも、笑顔を絶やさなかった。

「そうだったなぁ。でも、いつブッ倒れるか分からないから安静にしてろよ?」

ライオンヘアーの男の子も元気がいいようだ。春奈とも気が合うらしい。


でも、その軽い言葉は、現実に起こるものであった。

第10話 終わり