二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ”絶望”と”希望”交わる世界で。   魔法募集! ( No.78 )
日時: 2011/06/20 18:39
名前: 藍蝶 (ID: fjkP5x2w)
参照: ちょい待ち。掲示板めっちゃ使いにくい……管理人戻してよ〜

第5話 「幻想は脳を支配する物だから」


「ちょ……いきなりテレポート?倒せば良かった話じゃないの?リンサン」

テレポート到着点、とっても穏やかな場所で優乃がリンに聞く。

「僕は好戦的じゃないし、光流君だってそうだから多分逃げようって言ったんでしょ?考えなよ」

呆れた様にリンは答えるが、

「あたしは戦いたいのよ。ランクだって上げたいし」
「じゃあモンスターの群れに突っ込んでいきなさいよ。残骸は埋めてあげるからさ」
「はぁ?一国の王女様がそんな事言えるの?」
「あぁ言えるね!!」

リンと優乃の口論が続く。

「や、やめてください……!海ノ世界に来た目的から大分逸れてますよ?」
「ぐ……」
「……ふん」

由梨菜の制止により、口論は終わった。

「……にしても、本当に此処は静かだ。襲撃でも合ったみたいに荒れてるし」

確かにここは荒れている。
家は崩れ、ヒトもおらず、異臭が漂ってくる。


「……何、してるんですか?結構騒がしいんですけど」
「は?」

いつの間にか後ろに腕組をした少女がいた。

「えっと……何の用でしょうか?」

由梨菜は少し引き気味でそう聞くが、

「コッチが聞きたいのですが。違法侵入者?それなら直ちに逝かせますけど」

真剣な顔で構えをとる少女。身一つで5人に立ち向かおうなど、余程の自信があるのだろうか。

「5人同時に、来たらどうですか?」

余裕を持った表情。拓人はそれにキレ、少女に襲いかかっていく。

「このっ……!王女を侮辱してまでっ!”絶望放射(デスペリアラジェーション”ッ!」

振りかざした杖から出てきた巨大な閃光が少女を襲う。だがそれにものともせず、

「”アクア・ロック”」

一瞬にして、拓人の”絶望放射”を包みこんでしまった。

「なッ……」

当然拓人は愕然とした表情である。”絶望放射”は相手に絶望を負わせる技だが、逆にそれを返り討ちにされたのだ。

「へぇ、結構弱いんですか。光の技使うからちょぉっと、期待してたんですけどね」

薄笑いを浮かべ拓人に手を振りかざす。
終わった、皆がそう思った時

「……あれ?」

少女の動きが止まった。その目線は、優乃に向いている。

「優乃さんじゃないですか。お久しぶりですね。すっかり大きく頼もしくなってるじゃないですか」
「……はぁ?誰?意味分かんないから」

優乃が言い放った途端、刹那は少し驚いたような表情をしてみせた。

「うん?覚えてないんですか?…………あぁ、そういう事ですね」
「どういう事よ」
「自分で気付けないんですよね。そりゃあ、そうですからね」

皮肉たっぷりに言う少女と、あくまでも平静を装う優乃。

「……アンタ等さ、どーゆー関係とか知らないけど質問いい?」

そう名乗り出たのはリンである。

「なんでしょうか?」
「アンタの名前は?」
「私は、彩染刹那と申します。貴方こそお名乗りしてはいかがですか?」
「リン……リン=ホルン=クリフォニア」

不服そうなリン。初対面に対してこの態度はいけないんじゃないかと思われる。

「クリフォニア?王族の御方ですか……光ノ国の王女、といった所ですね」
「正解……アンタこそ、平民じゃないでしょ?」

そう言うと刹那はクスッと笑い、

「そちらも正解です。ちなみにこの国の王宮に仕える侍女やってます」
「じゃあ、土地の事は分かってる筈……だよね。ここは何処?」
「はぁ……分かりました、教えます。ここは首都セイザンヒュア。ちなみにあちらに見える大きな建物が王宮です」

「えっ……本当、なんですか!?」

普段礼儀正しく大人しい性格の光流さえ、身を乗り出す。
それもその筈、王宮、と刹那が指した建物が形こそ保っているが所々崩れ、腐敗している。

「アレが、王宮なの?」
「そうです。昔はもうちょっと綺麗でしたけど……」
「何で、こんな事に……此処も、首都とは言えないような感じですし」

由梨菜がそう言う。それに刹那は答えた。



「幻想は脳を支配する物だから」


「え……?」

半泣きになっていた拓人は疑問符を浮かべる。

「此処にいる人達は皆……この幻想によって狂ってしまいました。夢から、覚めなくなったんですよ」

切なげに浮かぶ泡に触れる刹那。


泡に映っていたのは、覚めぬ夢を見ている者の非道な振る舞いであった。

第5話 終わり