二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ”絶望”と”希望”交わる世界で。   魔法募集! ( No.93 )
日時: 2011/06/23 17:55
名前: 藍蝶 (ID: fjkP5x2w)
参照: この際だから暴露。僕、名前欄にメモする癖があります。

第6話 「何処までも残酷に夢は進みます」


「とりあえずさ、カケラ貰いたいんだけど、刹那交渉出来ない?」

浮かんでくる泡を持参していた銀の針でどんどん割っていくリン。
目線は泡から離しているが、的確に割っている。地味な特技だ。
でも、いきなり”カケラ”と言うが刹那は分かっているのだろうか。

「……そもそも、いくらランクが高くとも普通はカケラのある部屋に立ち入る事は禁止されています」

淡々と答える刹那。
分かっていたようだ。

「じゃあ、攻め落とす……という事になりますが……」

少し不安そうな由梨菜。彼女は好戦的ではない。

「それでいいんじゃない?あたしは構わないもの。行きたくないなら行かなくてもいい」

大きすぎて割れない泡に腰掛けている優乃が答える。最後には微量の優しさが込められているが伝わらず。

「わ、私は医者です。戦えない王宮兵士ですが、∞ランクの立派な医者なんです。ちゃんとついていきます!」

ふん、と優乃が鼻をそらす。別に、悪気がある訳でもない。
彼女は元々優しく仲間思いの子なのだ。でもそれを上手く伝えられない。いわゆる不器用、というものである。

「あの」

リンと刹那の間に光流が入ってきた。

「何?光流君」
「ここ首都ですけど、この世界の王宮かなり遠い場所にありません?」
「あ……」

刹那がはぁ、と溜息を洩らす。
光流の言う事は最もだ。ここセイザンヒュアが首都にも関わらず近くに王宮がある、という訳でもなかった。

「……一つ、お教え致します。海ノ世界の王宮はこの場にはありません。町外れの小さな村”符愛渡魔臨(フォードマリン)”にあります」
「……当て字?」
「何で、町外れなんですか?普通は首都では?」

由梨菜は疑問に思う。そりゃそうだ。

「……一応、此処に王宮はありますけど」
「え、マジ?見せて見せて!」

リンが子供の様に少しだけはしゃぐ。いくら王宮が小さくなっていようと人がいなくなっていようと、
その場所に魔力が微弱ながら残っている可能性がある。それを吸収しようというのだ。

「ほら」

でも、現実甘くなかったようで。
刹那が見せたのは掌に乗せた小さな小石っぽい廃材。

「……これ、何?」

優乃が廃材をちょんと突く。その欠片がポロッと取れ上へと浮かぶ。

「旧王宮……元々この場所にあった、王宮のなれの果てです」

「「「「「えっ!?」」」」」

「ちょ、待ってください。この欠片が王宮?ありえないですよ」

焦る拓人はそう言う。勿論、こう思っているのは彼だけではない。

「嘘なんて、吐いてませんよ?なれの果て。確かに私はそう言った筈です」

あくまでも冷静に答える刹那。その目はどこか物悲しげだ。

「だからってこれは……あっ!」

光流は気付いたようだ。こんな姿になった王宮の経緯を。

「そう。夢に支配されたヒトが此処まで壊しました。ここの神様って平和主義なので、逃げたようですね」
「夢に侵されただけで、こんなに崩すの……?」

冷静な優乃もこれは黙ってられない。

「逃げて、あの村に王宮を建てましたけど……アレ程崩れているなら、もう終わってるかもしれませんね」

サラッと最悪の事態を言葉にする刹那。



それは、現実に起こっていた。

第6話 終わり