二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

( 第二話 ) 必殺技 ( 彩音視点 ) ( No.25 )
日時: 2011/07/01 17:53
名前: 憐卯 ◆Oq2hcdcEh6 (ID: qsw8GWEd)


「凄いでヤンスねーっ!! もう次の試合が決まるなんて!」

 ほんとその通りだよ、うん。まさかこんなにも早く次の練習試合が申し込まれるとは思ってもみなかった。あまりにも早い展開に頭がくらくらしてきた。あれ、これって夢じゃないよね、夢だったらどうしよう——と考えているとまるであたしの心を見透かしたかのように夢じゃないよと亜美ちゃんが笑った。
 そう言えばナチュラルに馴染んでるけど、亜美ちゃんって部員なんだっけ、それともお手伝い? ううん、マネージャーかも——……

「やったな、円堂」

 ぽん、と嬉しげに半田くんが円堂くんの肩を叩く。すると円堂くんは嬉しげに笑い、「ああ、夢みたいだよ!」と返した。本当に嬉しげな皆にあたしも思わず笑みが零れる。でも、亜美ちゃんは笑っていなかった。冷めた瞳をしているので思わず凝視していると、えへへと笑われた。
 今度こそボクの出番がどうのこうの言っている目金くんをさらりと無視して、あたしはのんびりと河川敷に先回りしようと考える。すると、亜美ちゃんがいきなり「先回りしてくるーっ」と言ってあたしより先に出て行ったしまった。亜美ちゃんが、出て行った瞬間、誰かが——否、きっとみんなが思っていたことを呟いた。

「あいつ、何かおかしいんだよな」

 ——嗚呼、そうだね。なんて頷くこともせずただ不思議そうに首を傾げてみる。だけど、もやもやした気持ちは晴れないままだ。本人の居ないところで陰口を叩くのはあまり好きじゃないけれど、これは本当にそうなんだ。
 一人だけ異様な雰囲気を纏っている亜美ちゃん。雷門イレブンを光としたら彼女は闇——でもない。白と黒で考えれば灰色。中立的というか、何を考えているのかわからない人だ。

「でもさ、サッカーは上手いんだからあいつもサッカー好きには変わりないだろ!」
「——そうだな!」

 な?、なんてニカッと笑みを浮かべた円堂くんの言葉を聞き雷門イレブンの皆が口々にそう言い始める。そうだよね、サッカーを愛しているのは皆同じだもん。もやもやとした気持ちは未だに残っていた。彼女に関わって彼女のことを知りたい、という気持ちも胸に抱いたままで。

「さ、河川敷に行こう? 亜美ちゃんが待ってる!」
「おう!!」

 そして、あたし達は河川敷へと向かった。必殺技を完成させる為に、だ。——皆が皆、必殺技を使えると良いんだけどね。でも、円堂くんのゴッドハンドは凄かったなあ、……。
 あたしも使いたいなあ、なんて頭の片隅でぼんやり考えつつ、

「河川敷まで競争だ!」

と張り切っている円堂くんの後を走って追いかけた。