二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

 ( 零章 ) 始まりの夜. ( No.3 )
日時: 2011/06/27 15:18
名前: 憐卯 ◆Oq2hcdcEh6 (ID: qsw8GWEd)

—とある場所—

「——偵察、ですか」

 ひんやりとした空気が肌を突き刺す。どんよりと暗い部屋に、一つの小さな影が映る。真っ直ぐにあのお方を見詰めながら、私—亜美、は訝しげに眉を寄せてみる。あのお方は何も言わずに微笑を浮かべ、頷いているだけだ。
 あのお方の判断も、決断も、指示も、何もかも正しいとは理解していても、偵察等という億劫なことはあまりしたくない。しかし、大切なあのお方に命じられたことは絶対。——私にとっては、だけれど。

「では、用意があるので失礼します」

 一礼し、顔に掛かった黒髪を手で払い除けつつ部屋を出る。薄暗い廊下に、一つの影。その影に見向きもせず、話しかけもせず、——ただ睨みつけて私は素通りする。“それ”はくすりと楽しげに笑っただけだった。其れが余計に、苛立ちを募らせる要因となる。
 君は玩具みたいだね、なんて耳元で囁かれて私は余計に“それ”を睨んで、廊下を歩き始めた。後ろで笑う影をもう二度と振り向きもせず、見向きもせずに。


***


—大江戸国際空港—

 がやがや、と平日にも関わらず込み合っている空港を見渡し、小さく溜息を吐いてみせた。目の前に広がる人混みに顔を顰め、とある人物を探す。幼馴染のアキちゃんが迎えに来てくれると言っていたのでそろそろ来ている頃かなあ、と思い様々な場所を探してみるも彼女はいまだに此方には来ない。
 少し早く着き過ぎたのかなあ、と不安げに思っていると遠くから聞き慣れた声が聞こえてきた。アキちゃんだとすぐ分かり、私—彩音はアキちゃんへと駆け寄る。

「ごめんね、少し遅れちゃった」
「ううん、早く着き過ぎたみたいだから」

 眉を下げて謝る彼女にぶんぶんと手を振って見せ、此方こそごめんねと困ったように笑う。そんな事ないよというアキちゃんはやっぱり何時見ても可愛らしいと思う。
 同い年には見えない——嗚呼、私は13歳だけど遅生まれだから今年で中学2年生——可愛さを持ち合わせているアキちゃんが少し羨ましい。私はそこまで可愛くないし、——うん。

「彩音ちゃんも雷門中でしょ?」

 うん、そうだよ。と頷くとアキちゃんが一緒だねと嬉しげに笑った。早く雷門中に行きたいなあ。サッカーはあんまり強くないって噂だけど。アスカの居る帝国でも良かったんだけどね、って思ったけど言わないことにしようっと。

「……何かが変わりそうな予感がする」

 アキちゃんを見詰めてそう呟いてみたけど、アキちゃんは気づいてないみたいだった。その“何か”が良い方に変われば良いんだけどと口内で祈るように呟き、アキちゃんの手を握ってみた。そうしたらアキちゃんが少し驚いた様子を見せた。