二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【REBORN日常】Distance【早めのバレンタイン】 ( No.175 )
日時: 2013/01/25 20:06
名前: 北大路 ◆Hy48GP/C2A (ID: cFR5yYoD)

#51「Be My Valentine-Two」


*イタリア、キャバッローネファミリーアジトにて。

2月14日。

特に任務もないので、とりあえずガレージで愛車の手入れをしていた恵作。現在寝落ち中。
ちなみに、愛車はハーレーです。名前はマイケル。

バイクをこよなく愛する設定だが、作中にバイク自体が出てこなかったので誰もこの設定のことを知らないだろう。
てか、どうでもいいよねー。

とか思っていると、恵作の携帯が鳴った。着メロは、プールの時から変えていない。

「……あ、寝てたぜ、ははっ」

着メロに起こされた恵作だが、ものすごく寝起きがいい。

恵作はランボとイーピン元気してっかな、とぼんやり思いながら携帯を開いた。
届いたのはメールであった。

『From ユナ
 Sub Happy-Valentine
 本文 日本にいつ帰るか分からないってことだから
    キャバッローネのアジトまでチョコ贈るね\^^/

    でわまた逢いましょう♪』


そういえば、今日は2月14日だったな。バレンタインデーか。
ふとそんなことを考えながら、恵作は携帯の画面を見ていた。

「あっ、恵作さーん」

ボケーっとしてたら、ガレージに誰か入ってきた。
別に勝手にガレージに入られても、特に恵作は気にしてない。

「おーうママン!! 何かあったか?」

入ってきたのは、ママンこと嘉神 美咲(かがみ みさき)。
18歳のバリバリJKでありながら、炊事洗濯など家事全般を完璧にこなすので、ファミリーみんなから「ママン」と呼ばれ親しまれている。

「日本のボンゴレファミリーの方から、恵作さん宛に荷物届いてます!!」

日本のボンゴレからの荷物というのは、ユナが贈ったというチョコのことだろう。

「あんがとな、ママン」

恵作は、美咲に礼を言うと、マイケルをガレージの隅に置いた。

「まだ18だってば!」

美咲がすかさず言い返す。
ママンと言われると、レスポンスが異様に早い。恵作が笑ってみせると、美咲もまた笑う。

「あ、荷物はちゃんと大広間に置いておきましたよ」
「おう、サンキューな」

そう言うと、美咲はガレージを後にした。
その母なる後ろ姿を見送りつつ、恵作はガレージのシャッターを下ろす。
母なる背中といっても、まだ18だし、子供がいる訳じゃないが。

ガレージを出て、すぐ目の前は広い庭になっている。
恵作は手入れが適当な庭をまっすぐ横切る。

しばらく進むと、庭に設置された物干し竿に、ハンガーで吊された洗濯物が並ぶのが右手に見える。
美咲がせっせと頑張ってくれたのだろう。

またしばらく進むと、やっと建物が見えた。庭が無駄に広い。

建物の入り口には、重厚な造りの扉がどしりと構えている。
扉を引くと、すぐ手前には洗面台があった。バイクをいじると手が少しオイルっぽい匂いがするので、毎回欠かさず恵作は手を洗う。

お誂え向きなタイミングで水道に出くわしたので、ついでに手を洗う恵作。

更に奧に進むと、IKEAでは買えないような高そうなソファーが幾つかあった。
だが、そのうちの1つのソファーには、先客がいた。

「千華ちゃーん、チョコちょーだい」

白髪交じりのオールバックのオッサンが、既にソファーに座っていた。

「ベロニカさんにですか……?」

千華と呼ばれた少女は、かなり嫌そうな顔をしていた。

オッサンの方は、ベロニカという名前である。
紳士的な見た目だが、私生活は「まるでダメなオッサン」のそれである、独身中年オヤジ。

「うん、手作りがいい」
「私まだチョコレート作ってないので……ごめんなさい」

遠まわしにチョコをあげることを拒否した少女。
彼女の名前は国守千華。下の名前は「せんか」だが、あだ名は「ちか」。

クリーム色のツインテールと、お嬢様口調が特徴。
麦藁帽子を被っているが、別に海賊王になりたいとかそういう訳ではない。

「ベロニカ、フられたなっ、はは」

恵作は、軽くベロニカをからかった。
からかわれたが、ベロニカは、おどけた表情で笑ってみせた。

「そうだ、恵作さん」

千華は、恵作の顔を見るなり言った。
いきなりだったので、恵作は少しビビった。

「これ、荷物です」

千華は、机に置いてあったダンボール箱を取ってきて、恵作に手渡した。
ダンボール箱は、思っていたより重たかった。

これが、ユナが言っていたチョコか。
この重量感が、ユナの想いだったり……しないか。などと恵作はぼんやり考えていた。

ダンボール箱には、送り先の欄にこのアジトの住所と、送り主の住所が書かれた紙が貼ってあった。

「ジャッポーネからか?」

ベロニカが尋ねた。

「一応な」

取りあえず箱を開けてみた。

中には、もじゃもじゃしたピンク色の、例えて言うなら刺身についてる細い大根の様な、あの感じのヤツが下に敷いてある。

その上に、特に目を引く赤色のハート型の箱と、去年も見たような「千口ノレチョコ」とかを袋に詰めたようなヤツが、一番に目についた。

前者はユナが、後者はユウがくれたのだろうか。

この他にも、可愛らしい包装のチョコやらクッキーやらが、全部で6人分くらい入っていた。

今年恵作は、まず6人からチョコをもらったのである。

「これが手作りチョコかぁ、恵作クンモテるねぇ」
「ははっ」

手作りって、貰っても嫌じゃない。むしろ嬉しい。

他には、A6サイズのファンシーショップで売ってそうなメモ帳で書かれた手紙が、チョコに添えられていた。

『でぃあー、恵作

 はっぴーばれんたいんっ(*´ω`)
 今年も手作りですっ(笑)
 天下のユナ様が作ったから
 美味しいよー(笑)

 ユナより』

大きなハート型のチョコに添えられた手紙。やっぱユナだった。

「これ、本命チョコじゃないかしら?」

千華が言った。
恵作はちょっとドキッとした。

「はは、嬉しいな」

はにかみ笑いで恵作は言った。

「これは、本命じゃないな?」

ベロニカは、白いリボンのついたラッピングのチョコを手にして言った。

中身は、市販の「千口ノレチョコ」が3つ。
そして、多分手作りの、500円玉大、薄さは5ミリのミルクチョコに、いろんな表情の絵がホワイトチョコで描かれている。

手紙には「珍しく手作りだから有り難く頂いちゃってー♪ ユウ」と 書いてあった。ユウが手作りチョコをよこすとは。
明日、地面から雪が降るな。

後は、京子、ハル、クローム、リスからだった。

「モテモテですね」

千華が笑う。恵作も笑い返す。

「……」

だが、ベロニカはひたすら、ダンボール箱を穴が開くくらいに見つめていた。
視線の先には、チョコと紙を入れただけのダンボールにあるはずのない……、

紫の煙と、多数のウジ虫がいた。

そういえばボンゴレに、手料理すべてが毒になるという、大変恐ろし料理の腕前を持つマフィアがいるという話を耳にしたことがある。

ベロニカの脳裏を、ふとある考えがよぎった。

——毒を盛って、恵作を……


ベロニカは、思わず立ち上がって、叫びだした。

「これはボンゴレとキャバッローネの全面戦争なのかぁ?!」



ビアンキお手製の毒チョコ騒動。

ベロニカのせいで大変な騒ぎになったが、我らがキャバッローネファミリーのボスはこう考えたという。

「発送してる間に腐ったんじゃねーか?」

ちなみに、周囲に部下は誰もいなかったらしい。