二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【REBORN日常】Distance【参照2000超企画】 ( No.182 )
日時: 2013/01/27 16:45
名前: 北大路 ◆Hy48GP/C2A (ID: cFR5yYoD)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode


*/リボーン(の様子を第三者)目線で。


——遅い、遅すぎる。

沢田家の玄関先に仁王立ちする赤ん坊。彼は相当苛立っていた。

そう、彼こそがあの七色のおしゃぶりを持つ、伝説の赤ん坊「アルコバレーノ」の一人。
凄そうに見えないのもまた、凄いところである。

ダメツナこと沢田綱吉を叩き直すために、日々家庭教師として、ユニークでクレージーな特訓を教え子のツナに実践させている。
そんな彼が、何にイライラしているかというと。

4時過ぎに「数学の教科書を忘れた、取りに行く」とかほざいて、学校まで教科書を取りに行ったツナが、4時30分を回ったのに帰ってこないのだ。
3分で帰って来いと言ったつもりなのだが……。

——まさか、逃げ出したのか?

リボーンは、ツナを追ってみることにしたようだ。



学校へ行くまでの間には、ツナはおろか他の並中生とは誰とも会わなかった。
とりあえず、学校の中を探してどこにもツナがいなければ……。

「町中探し出して、根性叩き直してやる」

心のつぶやきが、思わず声になってしまった。しかし気にせず、並中まで向かった。

そして、どれほど歩いたかは覚えていないが、目指していた並中に着いた。
もうだいぶ陽が傾いている。西日が校舎をオレンジ色に染めている。

確かツナは1年A組だ。正面玄関からA組までの道のりを歩きながら、リボーンはツナを探す。
ふと、リボーンは足を止める。

何かが聞こえる。楽器の音と、ツナらしき人物の声。
リボーンはすぐさま、その声と音の聞こえる教室へと赴く。

「ツナ、てめぇ何してやがった」

引き戸の近くにあった、コンパスで穴の掘られた誰かの机に飛び乗って、リボーンは言った。
そして、教室をぐるりと見回す。

教室には、窓際の席で、椅子にまたがって後ろ向きに座っているツナと、もう一人、金髪の女子がいた。さっき聞こえた楽器の音の正体は、彼女が手に持っている楽器。

「リボーン!!」

ツナはリボーンを見つけると、椅子から飛び退くようにして立った。
言うまでもなく、めっちゃビビっているのである。

「りぼーん? 弟か?」

金髪少女の方は、とっさにそう判断したようだが……。

「こんなにも弟に怯えるような兄ってどうなの? それとも兄を怯えさせるような弟?」
「違うぞ、オレはツナの家庭教師かてきょーだ」

リボーンは、金髪の意見はあっさり否定しつつ、自分の職業を分かりにくく略して言った。

「かてきょーって、家庭教師のこと?」

リボーンのくりっとした瞳を見つめながら、金髪はツナとリボーンに尋ねた。

「まあ、うん……」
「そうだぞ」

2人はほぼ同時にそう言って、ツナは苦笑いし、リボーンはただ頷いた。

「リボン……とか言いましたっけ」
「リボーンだよ」

変わった名前の赤ん坊だなー、ませてやんの、とか思いながら、金髪は言った。

「ごめん、リボーンくん、私は如月ユウです」

ユウは、リボーンの目を見ながら自己紹介した。リボーンも同じく、「オレはリボーン、殺し屋だ」と自己紹介した。
殺し屋で家庭教師で、一体この赤ん坊は何者だろう、とユウは思った。まあ、子供の戯言ぐらいだと思えば……大丈夫だろう。

「今度是非、私に数学を教えていただければ」

半信半疑だが、一応ユウはこう返した。教えてもらえるなら、めっけもんだろうな。

「ああ、今から数学の勉強をしようと思っていたんだ。……教科書はあるか、ユウ?」

口元だけニンマリ笑いながら、リボーンは言った。これ、後からお金取られたりしないか?
だがやはり、教えてもらえるならば、めっけもんである。

「あるよ」

ユウの指差す先には、ものすごい数の教科書がロッカーの中で雪崩ている。そう、全て置いてるのだ。

「ロッカーどうなってんの? そんなにまでなっちゃうんだね」

このロッカーの汚さには、ツナも呆れるしかなかった。ま、人のこと言えないのは言えないんだけど。

「じゃ、早速はじめるぞ。お前もさっさと教科書持って来い」

リボーンがツナに体当たりする。体格ではツナの方が圧倒的に有利なのに、何故かツナがぶっ飛んだ。いや、この赤ん坊怖すぎるでしょ、とユウは思った。

「はーいリボーン先生」

教科書を持って、ユウはリボーンの近くの席に座った。ツナもまた、その近くに座った。

「ユウは、数学の何を教わりたいんだ?」
「方程式が一番苦手なんだけど」
「オレも方程式苦手」





5時45分。完全下校時刻の15分前を告げるチャイムが鳴った。
約1時間近くに及んだリボーンによる数学講座は、これで終講である。

「いやー、よく分かったわ。すごいな、リボーン」
「当然だ」

ツナに対しての徹底したスパルタを目の当たりにし、若干引いたりもしたが、分かりやすくて案外いい授業をする、実はとってもいい先生なんじゃないか。ぼんやりとだが、ユウは思った。

「じゃ、またお世話になるかも」

楽器をせっせと片付け、教科書をしまい、ユウは足早に教室を去っていった。

「そういやお前ら、俺が来るまでの間何してたんだ?」

ふとリボーンがツナに尋ねた。

「如月さんの演奏を聴いてたんだ」
「クラリネットか」

聴いてみたかったかもな、アイツの演奏。なんて考えながら、リボーンは「そっか、じゃーオレ達も帰るか」と言って教室を出た。

「あ、ちょっと待ってよ!」
「トロイぞ、ツナ」


ユウがあの日奏でた旋律。それは、互いが友であり繋がりを絶たない限りは、きっと色褪せない——





        永久の旋律。






*fin.