二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【REBORN日常】Distance【参照3000超】 ( No.201 )
日時: 2013/03/15 15:12
名前: 北大路 ◆Hy48GP/C2A (ID: mYaacdZq)
参照: http://p.tl/FKt8

参照3000超記念
#零-参「月に揺らめく狼二匹」


ゲーセンまでの道のりには、夕方でも昼でも薄暗い近道がある。たまに蛇とか狸が出る、などという話を聞くが、ユナは全く気にしない。とにかく早くゲーセン行きたい。で、ガンシューティングとかやりたい。そういう気分だった。

しかし、その道には、どっかの不良な男子高校生が群れていた。相当危険な匂いがする。そのうちの一人と、ユナの目が合ってしまった。

「おっ、あの娘も並中生じゃん」

一人がそう言うと、不良全員がこっちを向いた。なかなかに怖かったが、ユナはものともしていなかった。不良の半分が不細工だったからである。

「てーか如月嬢じゃね?」
「まじかよ、じゃあ学年違くね?」

こっちをチラチラ見ながら、不良たちは何か話していた。そして時折、誰かのほうを向く。仲間……ではなさそうだ。

「何? 何か用?」

一体何を話しているか気になり、痺れを切らしたユナは、不良に向かってこう言った。しかもタメ口で。

「如月嬢、コイツも並中生だよな?」

そう言って、グループで最もガタイのいい男が、誰かを蹴って一歩前に進ませた。名札の色で言えば、私の2つ下の学年……つまり、1年である。

1年坊主は、銀髪でシルバーアクセをたくさん身につけていた。チャラいしイカツい。
コイツ、完全に調子に乗ったな——それが一年坊主に対する第一印象であった。

「そうなんじゃない? ウチの制服だし」

そういえば……。ユウが話していた転校生のことだろうか。6月くらいに転校してきた奴が、半端なくイカツくて怖い。そして頭が良い、めっちゃ賢い。羨ましい。などと散々言っていた。

その一方で、あの1年もうマジでイケメン、という話も聞いた。主にユナはイケメンが大好きだったのであるが、年下不良ってちょっとなーと思っていたので、軽く流す程度で気に留めなかった。

「……転校生だったと」

肝心なところで名前が出てこない。ユウから聞いた名前が思い出せない。ものすごくイカツい名前だった気がする。牢獄の「獄」という字を書くという話を聞いたのだが……。

「マジかよー、ありがと如月嬢」

何でこいつらが私のこと、しかもあだ名を知っているのだろう。気になって「何で私のこと、しかもあだ名知ってんの?」と聞いてみた。
すると不良は、苦笑しながら「こないだナンパして振られたんだよねー」といった。ユナはというと、完全に覚えていなかった。

「あっそ。で? この1年坊主はどーするつもり?」

しばらくの間おざなりにされていた銀髪1年坊主を見ながら、ユナは不良に尋ねた。すると、睨まれた。1年坊主に。よく見るとかなり怪我を負っているようだった。

「こいつさー、ダイナマイト持ってやがんだよ」
「おう、もう切れちまったけどな」

おや、何とも物騒な1年坊主じゃないか。これ以上関わるのって危険かも。だって受験生だし? と自問自答してみた。

「ま、俺にかかったらこいつバラすのなんて、簡単っしょー」
「なー」

並中生をこんなところでバラされんの、気分悪いんですけど。てーか、ブスのくせに調子乗ってんな、お前ら。鬱陶しいからアンタたちバラしてやろーか?

そんなことを考えていたら、自然と体が動いていた。

「んなこと、させっかよ」

一番ブサイクで、一番調子に乗っていた不良の顔面めがけて、蹴りを入れた。それから間髪いれず、腹パンを5発ほどお見舞いした。あまりに急すぎる展開には不良も驚いたが、反射に近い感じで、残りの奴らもユナに反撃しようとした。

それから先は、何も覚えていなかった。

全て終わったあと、ユナの前には血まみれの一年坊主の姿があったのみだった。そしたら、警察が来た。ユナは無意識に、1年坊主の手を引いて逃げ出していた。
警察官はどこまでも追ってきそうだったので、ユナは狭い裏路地に逃げ込んだ。

「待たんかい!!」

警察官は、大通りへと走っていった。ユナはほっと胸をなでおろす。そして、1年坊主の方を見た。

月の光に照らされた彼の顔。さっきは暗くて見えなかったが、かなり整った顔立ちである。イケメンレーダーがビビビと反応した。レベル4。

「お怪我の具合は?」

使ったことのない敬語(?)で、1年坊主を気遣うユナ。何かおかしいが、何がおかしいかはユナには分からない。アホだから。

「……別に、大したことねーよ」

そう言ったが、1年坊主。腕からかなり出血しているようだ。見かねたユナは……、

「!!」

制服の半袖ブラウスの袖を、何と片方引きちぎってしまった。それを1年坊主の腕に巻いて、止血の処置をした。その一挙一挙の見目麗しいこと。やってることはバカの極みだけど。

「できた!! 後はもう大人しくすることだな」
「……」

袖をちぎって処置してやったまでは良かったが、ちぎられたブラウスが、ワイルドな状態になっていたので、ユナは思わず苦笑した。

「可愛イルドだろー、けどこれで帰るのは嫌だぜぇ」
「……わりぃな」

ちょっとスベった。ユナの中では、まあまあいい線いったと思ったらしいが。

「あんた、名前は?」

ふと、ユナが尋ねてみた。深い意味はなかった。
月光が照らす、茶髪狼と銀髪狼。

*END