二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【イナイレ】 We are player ! ( No.7 )
日時: 2011/08/12 17:39
名前: ろくもり (ID: UfUkp6Ds)

  4話=すれ違い=



「庵!!」
「あ?・・・って梓か。」


足音の主は練習試合で分かれたはずの庵だった。
梓は庵の姿を確認するなり名前を呼んだ。
だが、肝心の庵は梓をすぐには認識できなかったらしく「あ?」と可笑しな声を上げてからやっと梓と認識した。
梓はそんな弟に向かって「相変わらずだな」と言いたげに軽く溜息を吐いてから庵に問うた。


「お前こんなとこで何してんだよ?帝国の皆と帰ったんじゃないのか?」
「んー?」


梓の問いに庵は練習試合の時とはまるで別人のようにボーっとした顔で
「あーっとだな、それはー。えーと」とだけ延々と言っていた。
梓はそんな庵を見て直感的に、且、確信して思った。
「コイツ、絶対今なにも考えてない。」と。
そう、庵は傍から見れば冷静でクールな人と思われがちだが実際は、
ただ何時もボーっとしていて考えていることは基本的に今日の晩御飯のことなど。
それを知っている梓は今回もそんな感じの庵に質問しておいた梓自身からこう告げた。


「あー、もういい。わかった。どうせ“何となく”だろ?」
「そうそう。何となく。」
「・・・(コイツまじで何も考えてなかったか。)」


梓の言った言葉に庵はなんの躊躇もなく同意した。
梓は自分の予想が見事に的中したが起こった感情は喜びではなく呆れだった。
そんな呆れほうけている梓に今度は庵が問うた。


「お前こそこんなトコで何してんだよ。
さっき来る途中に雷門の奴らが雷々軒に入っていくの見かけたから一緒にいるのかと思ってたのに。
お前も何となくか?」
「お前と一緒にするな。ちゃんと理由はあるよ。」


梓はコホン、と咳払いをしてから庵の目をしっかり見ながら答えた。


「ここに来たらお前に会える気がしたんだ。」





〜梓視点〜


「ここに来たらお前に会える気がしたんだ。」
「ぇ・・・・」


そう言ったオレの真面目な顔をみて小さく反応した庵の顔は
「コイツ何言ってんだ気色悪ぃ」と言わんばかりに露骨に嫌そうな顔をしたいた。

・・・・弟よ、そこまで引くことはないだろう。お兄ちゃんは悲しいぞ。

と、そんなふうに泣きたくなる俺だがココはぐっと堪えて話を続けた。


「お前に会って話をしたかったんだ。」
「・・・・」
「・・・あのさ、いい加減そのドン引きしたような顔やめてくんない!?すっげーマジで悲しいんだよ!!」
「だってお前、そんな真顔でそんなことを・・・」
「お前ぇぇぇ・・・人が折角真面目に話をしようとしているというのに・・・っ」
「あーあー、わかったわかった。聞くよ、ちゃんと聞くから座り込むなよ。」


とうとう挫けてしまったオレに面倒くさそうに手を差し伸べる庵。
・・・誰のせいだ誰の。ってかなんだその面倒くさそうな顔は。
まぁ文句は置いといて、だ。オレはやっと話を真面目に聞く気になった庵にまた話しを続けることにした。


「庵さ、帝国のサッカーって楽しいか?」
「は?」


オレの問いに庵は少し戸惑っていたがすぐに俺の目を見てハッキリと答えた。


「楽しいよ。
確かに、梓達から見れば帝国のサッカーは間違っているかもしれないし、オレだって気に食わないところだって多少はある。
でもさ、それでも楽しくなかったら今頃オレはサッカーなんて辞めてる。
でもこうして続けていられるのは何だかんだ言っても今のサッカーが楽しいからなんだ。
だから、オレは帝国のサッカーは楽しいし、好きだと思ってる。」
「庵・・・・」


オレは庵の言葉に正直、凄く驚いた。
いつも晩御飯のことくらいしか考えていなかった庵がここまで考えていたのだから。

でもオレにも思いがあった。
そしてその思いを伝えるために今日、庵に会えるかもしれないと言う少しの予感を信じてココに来たのだから。


「お前が帝国をどう思っているのかは分かった。
それを知った上でこれを言ったらお前を困らせるかもしれない。でもな、オレ思うんだ。もう一度お前と同じチームでサッカーがしたいって。
だからさ・・・・雷門に来ないか————?」


そう、オレの思いは何故か唐突に帝国へ行くことを選び未だにその理由を教えない庵に対する率直な願いだった。
帝国に行った理由は分からない。けど、そんなことはまた同じチームでサッカーが出来ればなんの問題もなくなるんじゃないかと思った。
でもこれはオレの我侭で、なんとも自己中な考えだ。
そんなことは百も承知だ。でもオレはもう一度・・・・


「もう一度、お前と同じチームでサッカーがやりたいんだ・・・!」
「・・・ごめん、梓。それはできないんだ・・・。」
「は・・・なんでだよ・・・?」


オレの力のない疑問に庵は古びて風で吹き飛ばされたのか、空をほとんど拝めてしまう天井を見上げて懐かしそうに微笑みながらオレの問いをはぐらかすかの様に全く関係のないことを言った。


「ここさ、昔、秘密基地にして2人でよくサッカーしたよな。」
「は・・・?まぁ、そうだな。」


確かにココは2人の秘密基地でココに来ては2人でサッカーをした。
若干思い出に浸りつつあるオレの思考を遮るように庵は言葉を続けた。


「それでさ、ここで約束したよな。“どんな形でも絶対2人ともサッカーを辞めない”って」
「あぁ・・・・」


その約束は覚えていた。
だって、庵と同じチームでサッカーをした最後の日に交わした約束だから。
そして庵は更に言葉を続けた。


「オレ、この約束がオレと梓を繋ぐ一番のものだと思ってるんだ。
だからこの約束は絶対に破りたくない。
オレにとってこの約束を守るためには帝国にいることしか方法はないんだ。
だから雷門にはいけない。」


そう言った庵の目は力強く、オレを見ていた。
オレはその目に負けてまた弱々しく答えることしか出来なかった。


「なんだよそれ・・・意味わかんねぇよ・・・」
「・・・意味わかんなくていいよ。
じゃぁ、オレ帰るわ。そろそろ帰んなきゃ鬼道に怒られるし。」
「は!?あ、ちょ、庵!!」
「じゃーなー」


そう言って庵は少しだけオレから逃げるように建物の中から出て行った。
取り残されたオレの脳裏には庵の言葉が引っ掛かっていた。


『・・・意味わかんなくていいよ』

「っ・・・わかんなくていいなら何でそんな悲しそうな顔するんだよ・・・!!」


なぁ、オレお前の考えてることわかんねぇよ・・・・。
お前は今どんな気持ちで帝国にいるんだよ?
帝国に行くって決めた時お前に一体あったんだよ?
姉ちゃんはそのことを知っているのか?
じゃぁ何でオレには教えてくれなかったんだ・・・


なぁ、どうなんだよ・・・・庵————