二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- もう、泣くことなど赦されない ( No.5 )
- 日時: 2011/07/03 21:26
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: 6B38yoz9)
どうしてこんなに苦しいのかわからなくて、息も上手く出来なくて、視界はどんどんぼやけていって。ホント、だめなやつだと思う。この——藤浪葵っていう強がりなやつは。
わかりきってた事実。それは酷く哀しいことで、できれば嘘であってほしいと願い続けてきたこと。それを今日、僕は目の当りにしたわけで。そう、たったそれだけ。それだけなのにどうして、こんなにも憔悴してしまってるのだろうか。
もともと、アイツはあの娘が好きだったんだ。自覚してないだけで。だから一之瀬があの娘を抱きしめたとき、不服そうに唇を尖らせたんだよ。そんなちょっとした行為からでも、わかったじゃないか。だから傷つかないようにって、少しずつ心の準備をしてきたはずなのに。なのにこんな、ふらふらしちゃって。
「ばっかみたい」
誰に向けて放ったのか定かではない雑言が、湿った唇から吐き出された。
僕も僕だ。どーしてあんなやつを好きになんかなったんだろう。最初から見込みなんてなかったのにさ、アイツの言葉一つひとつに一喜一憂しちゃって。ああ、ホント、子供だったよ。……今も幼いけど、叶わぬ恋に全力投球なんて。違う人に代えてればこうして傷つくのも、もう少し後だったかもしれないのに。下手したら幸せになってたのかもしれない。たかだが中学生の恋愛だ。だけどそれは、素敵なものだったに違いない。あー、もったいないかも。
だけど。やっぱり自分は円堂だから、好きになったんだと思う。他の人と円堂をどうしても比べてしまって。最悪だ、ホントに。だけどしょーがないんだ。人間として魅力的すぎるんだもん。本当に好きだったんだもん。でも円堂、優しいからな。思い切り泣きじゃくって「本当に好きだったんだよ」なんて言ってやったら、本気で困るんだろうな。それで「ごめん」って本気で僕のこと傷つけて、自分も傷つくんだろうな。うん、自惚れてるかもだけどきっとそうに違いない。だって僕は、そんな円堂に惚れたのだ。でももう、泣くには遅すぎて。
初めての恋に失敗して、好きな人困らせることも上手くできなくて。
こんな僕に、泣いて哀しみを浄化する権利なんて、微塵も無い。せいぜいずっと、傷ついてればいいんだ。あの娘とアイツの幸せそうな笑顔を見て、ずーっと苦しんでれば。
制裁には、これくらいの苦しみが相応しいのだろう。
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豪(→)葵→円秋の予定。自虐的すぎる気もする……