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二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- それを恋と呼ぶ前に、 (01) ( No.17 )
- 日時: 2011/07/08 18:46
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: SjhcWjI.)
- 参照: :第四期捏造夢
ふんわりと香る甘い匂いがラベンダーと気付くまでに、少し時間がかかった。北海道はラベンダーが有名だったっけ、と曖昧な記憶を辿る。でも、きっと有名なんだろう、多分。パンフレットにもたくさん映っていた気がするし。涼風が髪をさらさらと乱していった。のどかだな、なんて思っていた。だけど実際、そうでもなくて。
こじんまりとした教会、快晴の青空、鳴り響く鐘の音。今日は、中学生時代からの友人——吹雪士郎の結婚式であった。十年の月日とはこんなに早いのか。あまり実感が湧かず、はっきりとしない気分であった。時間までもう少し、そろそろ円堂達のところにでも戻るか。ぼんやりとしたまま踵を返す。が、背中から聞こえるソプラノが俺の名前を呼んだ。
「風丸くん?」
え、——と刹那、思考が止まる。嗚呼、こうして会うのは何年振りなのだろうか。
明るい茶色のセミロング、薄い化粧がよく映える顔立ち、控え気味に浮かべられた微笑。俺の中で十四歳のまま止まっていた少女の姿が、一瞬で十年を越えた。戸惑いながらも笑って見せる。シンプルなパーティードレスがよく似合っていた。
「春崎、久しぶり」
「風丸くんこそ」
嬉しそうな笑顔は哀しくなるほど、あの日と変わっていなかった。
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