二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 小鳥は歪な夢を見る、(それは籠の中の世界だからさ!) ( No.23 )
- 日時: 2011/07/15 17:54
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: SjhcWjI.)
- 参照: ふどしの^p^
「よぉ、小鳥遊チャン」
嫌味っぽく吐き出されたその呼び名は、間違えなくあたしのことだった。
そしてあたしの名前を呼んだのは、間違えなく必死になって捜していたあいつだったのだ。
*
「どうして、こんなトコに、」
「ま、色々あってな。久しぶりに帰ってこられたから、様子見に来た」
そう目も合わせてくれずしれっと言い放つ不動。突然すぎる再会に戸惑っていると気付いてからかっているのか、はたまたホントに気付いてないんだか、悪戯っぽい笑みをやんわりと浮かべると暖かい目になった。こんな不動、初めて見た。やっぱり、惹かれずにはいられない。
「何? オレと会いたかった?」
「うっ……うるさ、い」
勢いで押し切ってしまいたかったけど、口が上手く回らない。久しぶりの一言も言ってくれず、言わせてくれないそいつに心底腹が立ったが仕方がない。潜水艦以来なのだ、元気で憎らしい不動と話すのは。初めてなのだ、暖かく笑う不動を見るのは。
「で、小鳥遊チャンはどうだった? 何かあったのか?」
それは、
「元気にやってたのかって、普通に聞けないのアンタ」
「まあ元気そうでなによりです」
「棒読み敬語ウザい」
軽くあしらうと……まだにたにたしてるアイツ。罵詈雑言を吐き出そうとしていた唇が止まる。違う、あたしが言いたいのはそんなことじゃない。結局、一番訊きづらいことは不動が言ってくれた。
「オレは、何も無かったけど」
そ、う。
戸惑いがちに呟いた言葉は、思ったより大きく辺りに響いた。アスファルトの上で夕陽が踊る、そんな幻想的でロマンチックな雰囲気が今は——憎い。嗚呼、もう! もう少し普通のシチュエーションだったら普通に会話して普通に笑って普通に素直になれるのに。ちゃんと女の子らしく、少しは可愛げのある微笑を浮かべることができるのに。
不動は今どーしてんの。そう尋ねれば彼は、帝国学園で寮生活を送っているらしい。佐久間や源田は入院中、周りからの風当たりはまだ冷たいだろうにそんな弱みは吐き出されなかった。ただ、強がってるとも思えなかった。
「まだサッカー、やってるでしょ……?」
つい不安になって語尾に疑問符を乗せてしまった。
「まあ、な。今はそんなに、こだわってないけど」
「、え?」
つっかえつっかえになりながら言葉が零れ、表情が固まってしまったあたし。けどそんな困惑はあいつ——鈍いあいつに伝わるはずもなく。一瞬、困ったような顔をしたがすぐに右腕に目を落とすと、
「あ、オレ、もう帰る。んじゃーな、小鳥遊チャン」
呆然と立ち止まっているあたしに手を振り、どこかへ駆けて行ってしまった。こだわってないって、それって、どういう、
「——嘘、」
それでも、震える指先をめいっぱい開きパーを作る。ぼんやりと手を振り返し薄く笑って見せた。アイツが遠くで何を叫んだかなんて、聴こえなかった。
+
勝つことにこだわる一貫した姿勢の不動さんが好きだった忍ちゃん。
私が不動産を書くとちゃらくなります。