二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 雨色がーる。 (※衝動モノ) ( No.34 )
- 日時: 2011/07/19 18:41
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: Ryt8vfyf)
- 参照: 雨ネタ。
灰色の厚く垂れこめた雨雲。ばしゃばしゃと世界を叩き付けるのは、激しい雨だった。遠くでは雷も鳴っているらしい、時折見える刹那の光は、普通に恐ろしかった。視界はその豪雨のせいで、白く霞んで見える。さっさと帰ろう、そう思っていたのに。
下駄箱でうろちょろとしている影、一つ。誰だ、どいつだ、こんな雨の日に空を眺めてるなんて。だってまさか、傘を忘れたとかそんなことだったら僕の立場はどうなる。嗚呼、知らない人でありますように!
「……え、」
「藤浪か」
学校としては、髪形や服装の規律は易しい雷門中学校。特徴的なメンバーの中でも一位二位を争う変わった奴——サッカー部のエース君じゃないか。珍しいなあ、雨を鑑賞中なの? と大真面目に尋ねてみたら、「俺が何かを持っていないことに気づけ」との事。うーん、何が足りないのかな。そう本気で悩んでいたら、怒られた。仕方なくごめんと告げる。
「……で、何で傘忘れたの」
「うっかりだ、うっかり」
「えー、円堂でさえ持ってきたのに? ドンマイじゃん」
円堂の名を出した途端、しかめられた表情、困ったようにしわが寄った眉。そこを突かれると痛いらしい——ふむふむ、そういうことか。
「……鬼道にも言われた」
「あ、なんかゴメン」
しんみり。
どうしようもない微妙な雰囲気。さあっと響く雨音をBGMに、居心地の悪い沈黙はしばらく続いた。こんな時、僕はどうしたら良いのだろう。……少女マンガに有りがちな場面がふっと脳裏に浮かんだが、ぶんぶんと頭を振りその考えを振り払う。まさか、そんな、恥ずかしい台詞を言えるはずがないじゃないか! ……で、でも、風邪引かれちゃったらどーしよう。円堂だって、鬼道だって、サッカー部全員困っちゃうよね。寂しがっちゃうよね。……僕は別に寂しくなんてないけど、さ。
「あ、あの、豪炎寺」
こんなどもってる僕なんておかしい。もう、なんなのさ……僕はただ、親切心から動いてるだけなのに。他に変な気持ちとか抱いてなんか無いのに。……多分。
「えと、その——」
疑問符を頭に乗っけて、首を傾げる豪炎寺。
嗚呼、もう勢いに任せて言っちゃえ! 投げやりに覚悟を決めると俯きながら、一気に言葉を吐き出した。
「この傘、貸してやるッ!」
ほぼ噛まずに言い切った僕は、達成感を存分に感じながら顔を上げた。……あ、あれ?
「……え?」
何だ、その拍子抜けしたような顔は。僕が優しいこと言うのがそんなに珍しいのか。むすっと唇を尖らせる僕に罪悪感を感じたのか、フリーズしていた豪炎寺はようやく動き出した。動揺してるように見えるのは、きっと気のせいだろう。
「可愛げのない傘だけど、これなら別に変じゃないし」
「いや、その……」
「あ、そんな気にしなくても良いよ。家、近いから」
にっこり愛想よく笑ってみる。豪炎寺もつられたのか口元が微かに緩んだ。その隙に、鞄を頭の上に乗せると昇降口を飛び出した。背中の方から豪炎寺の焦った声が飛んできて、くるりと振り向き、もっかい笑って見せる。
「じゃーねっ」
水を吸って重くなった制服が、ぺたりと肌に吸い付いた。その感覚は気持ち悪いものの、良いことをした後だ、気分が良い。それに、さ——火照った身体を冷やすには、これくらいがちょうど良いと思うんだ。
明日学校で会ったら豪炎寺に「貸し一個」って押し付けてやろう。背筋が凍りつくほど冷たい雨だったけど、そう考えると楽しくも思えた。
ほんと、明日が楽しみだなあ!
+
うちの葵は男らしくて困る。
豪雨=ごう=豪さんみたいなノリですよw
べたな展開だと思ってた人すいません、ただ葵が雨の中突っ走るだけの話でした。葵の中にも「相合傘」って単語はあるんだけど、恋人同士がするものみたいな認識が。豪炎寺さんはちょっと期待してたら見事に裏切られてしかも濡れさせちゃうっていう何ていうへたれ? まあそれである程度の罪悪感を覚えて、次頑張ってれば良い←