二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- それならば、どうしたら綺麗でいられるのでしょう。 ( No.55 )
- 日時: 2011/07/31 19:57
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: 24IJJfnz)
「無様だね、」
それは、ついに世の底辺にまで落ちぶれてしまった彼らに放った雑言なのか。それとも、
「まだま、だ、終わって、ねーぞ……」
諦めることを忘れたために、進むべき道を踏み外した我々を憐れんだ言葉なのか、自分で言ったにも関わらず、はっきりとしなかった。意識が白濁になっていき、息も小さくなっているのが感覚でわかる。腹に蹴りつけられたサッカーボールはコロコロと転がり、アイツの足元へと帰っていった。
「……お前こそ」
冷たい視線がフィールドに横たわった僕の体に容赦なく突き刺さり、青く長い髪が視界の隅で微かに揺れる。ばかやろー、そう罵ってやろうと大きく息を吸い込んだが、それでも呼吸は続かなかった。意識がどんどん、遠のいていく。次に唇を形作った時、僕は意識を手放した。
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きりりと、微かな痛みが腹部に走り、反射的に両腕でお腹を抱いた。それで痛みが緩和されるはず無かったけど。
「だいじょーぶ?」
それはこっちの台詞だ。
保健室のベッドに寝かされている吹雪を横目に、小さな溜息を吐いた。人の心配をしてるんだったら、自分の体の心配をしなよ。そう言いかけて、言葉を呑込む。嗚呼、そっか。吹雪はもう、吹っ切ったんだっけ。完璧の意味を悟ったんだっけ。だから、仲間を想うのか。
「……マネージャーだから、手加減してくれたみたいだよ」
「そう、……なら、良かった」
へらりと笑った吹雪に薄く笑い返す。そして、窓の外を見遣った。灰色の厚い雲。降るのか降らないのかしっかりしろよ、そう思う。もしも雨が降っていれば、試合は行われなかったのかもしれないのに。
「キャプテン、平気かな」
それは、自分たちが負けたことへの自己嫌悪状態に陥っているキャプテンに向けた言葉か。それとも、仲間を救えず落ち込んでいるであろう、独りの少年に対しての心配か。
嗚呼、でも、もしそうならば——僕は円堂が怖い。だって、自分たちをさんざん貶し傷つけ嘲笑い苦痛と負の感情を植え付けたアイツを心配するなんて、有り得ないから。僕はそんな、大きな大きな人間にはなれない。少なくとも、アイツだけは許せない。
吹雪は微かに動きを見せると、そのまま諦めてベッドに転がった。どういう訳か、吹雪や豪炎寺は雷門の中でも特に怪我が酷かった。それは、アイツの憎悪の対象になってしまったせいなのだろうか。隣のベッドに転がされている豪炎寺をちらりと見れば、その顔は苦痛に歪まされていて。……湿布、替えてやろうかな。冷蔵庫に足を運び、冷えた湿布を取り出す。
「キャプテンってさ、罪な男だよね」
「、え」
その言葉の意味を理解できずに振り返る。どこを見ているのか、焦点の合わない視線の先を辿ることは思いの外難しかった。
「キャプテンは、太陽のような人だろう? だから彼、期待しちゃったんじゃないかな。闇色に浸れば、キャプテンが助けに来てくれるって。お前の力が必要なんだって言って欲しかっただけなんじゃないかな?」
「……そう、かもね」
ぺろっと湿布の透明なセロハンを剥がす。
「彼、僕のこと嫌いみたいだったし」
「嗚呼、嫌ってたね。もともと強かった吹雪に嫉妬してた」
「……強さ、ね」
ズボンをまくって足首に湿布を貼る。小さな呻き声が聞こえた気もするが、新たに見つけた傷口を見て絆創膏を探す。吹雪の色白い腕にも蚯蚓腫れが見えて、静かに目を伏せた。
「でもさ、キャプテンはきっと彼を見捨てないでしょう? あの人、素のままで綺麗だから」
綺麗? と聞き返せば吹雪はゆっくりと頷いた。
「僕、あんなに綺麗事は似合う人、初めて見た」
「……どーかん」
「でしょ? って、ちょっと、痛いってば」
ごめんごめんと口先だけで謝り、がさつではあるが絆創膏を貼りつける。そんな光景が吹雪だけでいくつも見えるのだから、悍ましい。
もし円堂が綺麗なら、そんな綺麗を違和感と見てとってしまう僕は正反対の人間なんだろう。そして彼は、堕ちた彼とも正反対。
「まあ、怪我が治ったら、彼とはもう一回戦うんだろうけど」
そう、けろりと言い放ってくれる吹雪に改めて感謝した。
もし雷門イレブンもがダークエンペラーズのように遠い存在になってしまったら、僕は生きていけないだろうから。——円堂のような人を信じられないで生きるなんて、虚しいだけなんだろうね。
豪炎寺の頬に絆創膏を貼りつける。ぴくりと跳ねた肩を見遣ると、また溜息を吐いた。
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もしDEが勝ってたら、っていう捏造前提。
やや葵さん円堂教信者だねw楽しいから良いけど(