二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- [ ゆう様リク ] ( No.69 )
- 日時: 2011/08/05 18:53
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: Xgqnh5jE)
「やった! 風丸くん、一緒に日直だよ!」
素直に嬉しかったから、この感情をそのまま表情にし彼に見せた。にこっと笑い掛ければ、風丸くんもその優しい微笑を私に向けてくれて。とくん、と胸が躍る。それが嬉しくて、また自然に笑み崩れた。
——でも、
( 嬉しいのは私だけ、か )
疑うことはいけないと、わかってはいる。けれど、少し引き攣った彼のその笑みに胸が苦しくなった。気のせいだ、なんて言い訳はもう、この感情を押さえつけるには無理があって。
*
長かった授業がようやく終わりを告げて、クラスメートは皆、早々と部活へ行ってしまった。今、この夕陽が差し込む教室で私は、彼と二人きり。それは素敵すぎるシチュエーションで、彼に密かに想いを寄せる私としては、願ってもいない現実だった。あれ、だけど、
嬉しい、のに、苦しい。
はは、おかしいな。
気を紛らわせる為に口角を吊り上げ、笑顔を作ってみた。そんな自分がおかしくて喉の奥からくすくすと小さな声が漏れる。自嘲の文字が含まれたその響きは、隣で日誌を書いている彼に届いてしまったらしい。不思議そうに眉を上げ、どうしたと言わんばかりに私を眺める彼。その表情にさえ、優しさは微塵も含まれていない。哀しいなぁ、なんて。
「亜美、あの、」
「大丈夫だよ」
簡単に言葉を返すと、椅子を引き黒板へと向かう。乾いた悲鳴が足元に響いた。白と黄色と赤と青と、そんなチョークの粉で汚れた黒板消しは、新たに文字を消すには少々不便で。ぽん、と軽く黒板を叩く。刹那、白い粉が舞い視界が霞んだ。
嗚呼、もし私が風丸くんに「大丈夫なんかじゃないよ」って泣きながら言ったら、少しは心配してくれるかな? 私も、彼がその優しさを惜し気もなく振り撒ける対象に入り込めるのかな? ——そうでもしないと、入れないのかな。
明日の日付を記入すると、彼の方を振り向く。誰もいない教室で独り、ぽつんと座る風丸くんの姿は幻想的で。暫くの間、視線を奪われる。いつも人の中央にいる風丸くんを独り占めできるのは、心なしか気分が良かった。へにゃりと顔が嬉々として歪む。
「……よし」
あ、どうやら日誌を書き終えたみたい。風丸くんは両手を頭の上に回すと、うーんと一回伸びをした。唇からは小さな欠伸も零れて。……可愛い、なんて思ってしまう。本人に言ってみるなんてそんなこと、その時の反応が怖いから絶対に言わないけど。
「あとは日誌を職員室に置いてくるだけか……亜美、どっちが行く?」
じゃんけんで決めるか、なんて暢気に提案してくる風丸くん。嗚呼、ずっとこんなふうにしていたい——そう思う反面、このままでは嫌だと心が叫ぶ。だから、私がこんなことを口走ってしまったのも、本当に自覚が無い時で。
「——ねえ、」
“私、風丸くんのこと好きだよ。”
「、え?」
でもキミは、私のことが嫌いなんだよね。
こんな自虐的な言葉は、自分の心の中だけで付け足した。
……言っちゃった、覚悟も何もしてないのに。
本当に無意識だった。ただ、言ったら何か変わるのかな、なんていう好奇心から。この想いを伝えても何も変わらないなんてわかっていたのに、もしこの関係が変わってしまっても動揺するのは自分だと知っていたのに。嗚呼、なんて、愚かで弱くてちっぽけでどうしようもなく子供な私。
ぽかん、そんな表情で私を見つめてくる風丸くん。そして、ゆっくりとその唇が開かれた。
「——亜美は仲間なんだから、当たり前だろ」
え?
あ……私、今、彼に、
「じゃあ俺、日誌置いてくるから。先に部活行ってろ」
一線を、引かれた。
好きとも嫌いとも答えて貰えなくて、仲間っていう最高で最低の響きで片づけられた。つまり私は、どちらの意味でも彼に意識されていないと、そういう事なの? 私はこんなに好きなのに、風丸くんは私を『嫌いなヤツ』としてもその頭の中に置いといてくれないんだね。そんな哀しいことって、ねえ、嫌だよそんなの。
早く部活行けよー、そう呟きながら教室を出ていく彼の背中が、酷く遠いモノに見えた。
「——どうして、伝わらないのかなぁ」
ぽたり、と。
頬を伝い瞳を濡らした綺麗で汚れたそれが涙だと、幼い私はまだ知らない。
+
亜美ちゃんhshsとか叫びながら書いてました。この設定良いですねおいしいです←
えーっと先日は神文ごちでした^^ 私なりに感謝の意味も込めて頑張ったのですが、サンボイフル活用の駄文となりましたすいません;かなり楽しかったのでノリノリで書かせて頂いたのですが。
訂正批判文句、全て受け付けております。書き直しもしますのでー!
ではではゆう様、リク有難う御座いました! いつでも良いので感想を頂けると嬉しいです。今後に役立てます←