二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 世界が僕らを見捨てた日 ( No.126 )
- 日時: 2011/08/30 19:42
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: DcPYr5mR)
毎晩毎晩、月明かりが照らすお兄ちゃんの寝顔を見て泣いた。それは、お兄ちゃんが目を覚まし、ばれてしまったその日まで続いた。胸が痛くて、仕方が無かったから。
殴られるよりも蹴られるよりも突き飛ばされるよりも無視されるよりも罵られるよりも暴言を吐かれるよりも消えろと拒絶されるよりも馬鹿な奴と大馬鹿者に言われるよりも、
私の代わりになったせいで刻まれた傷が、お兄ちゃんの頬にあることが嫌だった。
「お兄ちゃん、私ね、早く大人になりたかったの」
孤児院に引き取られて、まだ小さかった私が苛められていた頃。私はそればかり願って、あまりの無謀さに胸を焦がしていた。時間は、人が簡単に操作できるものじゃないから。時は戻せないし、進めることなんて出来っこない。それだけは、幼い私にもよくわかった。わからない訳にはいかなかった。
「早く大人になって、お兄ちゃんを護ってあげたかった」
それは本心。孤児院を抜け出して、お兄ちゃんと一緒に逃避行したかった。私は、苛めっこからも、弱虫な自分からも、無理ばっかりするお兄ちゃんからも逃げたかった。いっそ、世界が私たちを見捨ててくれればとも。
お兄ちゃんはゆっくりと息を吐き、そうかとぽつり呟いた。真紅の瞳が伏せられ、唇に笑みが浮かぶ。
「……俺はずっと、子供のままでいたかった」
何も知らない、綺麗で無垢なままの、純粋な人でありたかった。
お兄ちゃんは薄らと微笑んだ。嗚呼、お兄ちゃんの願い事は叶いっこないね。そう笑えば、わかってると返された。私はいつか大人になる。それはお兄ちゃんも一緒だし、お兄ちゃんのほうが早い。でも、子供にはもう二度と戻れない。
「そういう事を願う辺り、お兄ちゃんって大人だよね」
「だから子供でいたいと言っているだろう」
哀しそうにお兄ちゃんは笑った。私は何故か、口角を吊り上げるだけで精いっぱいだった。
+
低クオリティだねw
子供でいたかった大人な鬼道さんと、大人になりたい子供な春奈ちゃん。結構この二人の絡み好きです。シスコンとかブラコンとかじゃなくて。