二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

 [ 紅闇様リク ] ( No.130 )
日時: 2011/09/01 12:54
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: P7KUxYiI)
参照: 合作楽しそうですね^^



 目の前で狼狽えているそいつは、日頃の姿からは想像がつかないほどの落ち込みようだった。いくらポジティブな円堂とは言え、仲間だったはずのヤツと戦うのは辛いのだろう。それも、相手チームのキャプテンは——幼い頃から一緒に過ごしてきた、風丸一郎太なのだから。

「どうする? 昔の仲間と戦うのか? 判断はお前に任せるぞ、キャプテン」

 昔の仲間、か。
 自分で言ったことにも関わらず、その言葉の持つ響きは酷く重苦しいものに感じられた。嗚呼、でも、今の円堂には“キャプテン”という言葉のほうが心苦しいのだろうが。それでも私は、生憎『戦いたくないのなら、それでもいい。無理をするな』などと言える性質(たち)ではない。今がどれだけ苦しくても、この試合を破棄してはいけないと思うのだ。私たちが見るべきものは、目の前にある“楽”ではなく、その先にある“楽しいサッカー”。そうだろう、円堂?

「……俺は、戦わなくちゃと思う」

 ——そうしたらさ、茜。

「茜は俺に、ついてきてくれるか?」

 弱弱しい声音で訊かれたものだから刹那、返答に戸惑ってしまった。私だって、仲間を敵とし、そう言った意味でぶつかるのは好めない。でも、円堂。お前の考えは、間違ってはいない。

「円堂、私は——」

 ずっとお前の味方だ。私が好きなのは、円堂が信じてきたサッカーだよ。
 そう告げてやるつもりだった。だが、それは黒き影によって遮られる。正面に立った円堂の瞳に驚愕の色が浮かび、そして哀しそうに歪んだ。本当に珍しい。こいつが、こんな表情をするなんて。そして何て愉快なんだろうか、円堂をこんな表情にさせられるヤツは。

 なあ、そうだろう?

「素敵な友情ごっこだなぁ、円堂、茜」
「……貴様、」

 昔、女っぽいとからかわれたお前を慰めようと、円堂と二人でよく『みんな、かぜまるがかっこいいからいじわるするんだ。きにしなくてもだいじょうぶ、わたしたちはかぜまるの見方だ』なんて励ましたな。——そんな、青く美しかったはずの髪は、波打つ海よりも黒く、影が忍んでいた。全く、いつからそんな風に変わってしまったんだ、お前は。

「か、ぜま、る……?」

 怯えたように、拒絶するように。それでもはっきりと、円堂はそいつ——風丸一郎太を見据えた。
 にんまり。意地の悪い笑みを浮かべ、そこに佇む風丸。しばらく流れる沈黙に耐えられず、私は息を吸う。

「まあ、そのうちお前とは戦うと思っていたが。……こんな形でとは、残念だ」
「そうか? 俺は良かったと思うけど。——きっと茜にも、この石の良さが伝わるだろうからな」

 嬉しそうに語る風丸。嗚呼、本当に吐き気がする。どうしてそんなものを持っているんだよ、風丸。私たちは、皆で強くなろうと誓ったじゃないか。円堂のようにただ前を向いて、バカみたいにサッカーボールと向き合おうと。そうして今まで強くなってきたんだろう? 違うのか、風丸?
 ぐっと拳を握り、一歩そいつに近づく。が、円堂に手で先制され退いた。

「……風丸。もう、戻るつもりは無いのか?」

 静かに尋ねる円堂。その声は何処か震えていた。
 そんな円堂を鼻で笑うと、風丸は唇で怪しげな笑みを描いた。嫌な予感がする。でも、今この二人の間に割り込んだら——円堂の努力は水の泡じゃないか。雷門イレブンの奴らの為にも、ここは耐えなければならない。

「もう一度、訊いてくれるんだな。……円堂」

 刹那、その笑顔が無垢なものになり、掠れた声で円堂の名を呼んだのは幻覚か。そして——

( あ か ね 、 ご め ん )

 薄い唇がそう、私に小さく語りかけたのは、嵐の前の夢か現か、幻か。
 予想外の出来事に息を呑む私と円堂。——が、気付けばそこに『風丸一郎太』の姿は無く。視界に映り込んでいるのは、

「俺たちは“ダークエンペラーズ”なんだ。お前たち雷門イレブンを倒して、最強の称号を強奪する!」

 私たちの、敵。

 自信に満ち溢れたその真紅の瞳。どこか諦めの色が見えるのは、私の気のせいなのだろうか。でも、それでも——風丸は少しだけ俯き、ぽつりと何かを吐き出した。

「——俺はもう、嫌われたよな。ハハハッ、今更、戻れるはずない。そうだろ、茜?」

 私の大切な幼馴染は、確かにそこにいるのに。
 きっと風丸は、気付いたんだろう。この行動が、間違いだということに。この言葉が、誰かを傷つけるよりも先に己の首を絞めていることに。けれど、前へ進むしか選択肢が残されていないことに。嗚呼、お前は本当に馬鹿だ。

 雷門イレブンの奴らはまだ、お前を待ち続けているのに。

「バーカ。私がいつお前を嫌ったと言った?」

 私——咲乃茜だって、お前とまた“楽しいサッカー”ができると信じているんだぞ? 世界征服阻止だの野望だの復讐だの、そんなものはどうだって良い。私が、私たちが望んでいることはただ一つ。
 お前らとまた、モノクロのボールを蹴り合う日を待ち焦がれているんだ。

「……あか、ね」

 ぽつり、と静寂に呑みこまれてしまいそうなほど小さな呟きは、か細い声音で震えていた、何かに縋るようなその響きは、

「——円堂、風丸、」

 いったい、どちらのものだったのだろうか?


(覚めることのない悪夢は、まだ、)



彼らを苦しめ続けるのです。

何となく風丸さんのターンが多いのはご愛嬌。だってDE前って言われたらこうなっちゃうっt(言い訳無用!
やっぱり闇丸さんも楽しいですね! 闇堕ちシリーズ書きたいなぁ……。

ともあれ、リク有難う御座いました!
茜さまのキャラがとてつもなく不安です; 良ければダメだし罵詈雑言修正手直し書き直し受け付けておりますので、よろしくお願いします^^