二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

 好きと嫌い。 ( No.166 )
日時: 2011/09/21 12:58
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: nGuu1StL)
参照: テスト、だと?




 ふとグラウンドからベンチを見やれば、秋がせっせと働く姿が目に飛び込んできた。
 秋はあの日から、サッカーを嫌い始めたのに。誰が彼女にサッカーの魅力を伝えたんだろうなと考えれば、サッカーバカであることは容易に想像がついた。けれど、脳裏に浮かんだその少年は、生憎、俺の姿では無い。

 秋が誰を好きかなんてすぐにわかるけど、でもきっと、その視界の隅には常に一之瀬が映っているんだろう。俺はきっと、対象外。友達の枠にずっと納め続けてくれるのは嬉しいけど、それ以上先には行けないからなあ。寂しいような、哀しいような。素直に喜べないのは、確かな事実な訳で。
 別に、秋の恋心が報われないよう祈ってる訳じゃない。勿論、早いとこ結ばれて、幸せに笑っててくれればいいんだけど、

「……やっぱり不安なんだよなー」

 サッカーしか眼中に無いあいつらに、健気な彼女を奪われるのは。



 円堂は本当に太陽みたいなやつで、あいつに惹かれない人間はいないだろう。その通り、円堂には俺にも秋も、一之瀬にも惹かれてる。だけど、と言うか。だからこそ嫌なんだよな。円堂を好く大勢の中に、秋はぽつんと佇んでいて。共に過ごした時間が長いと言えど、円堂なら気付かないで見過ごす可能性も無い訳じゃないし。でもきっと秋は、そんな円堂も許すだろうから、俺は何も言えないんだよなあ。

 一之瀬は、ああ見えて独占欲も強いし我儘だし、悪く言えば自己中だ。だから、秋のことも自分に縛り付けかねない。でも裏を返せば、それだけ秋を大切にしてる訳だから、一概には言えない訳で。でも、秋もそれをわかってて一之瀬に縛られてやるんだろう。秋は優しいというか、そういうことには無頓着というか。一之瀬は秋と結ばれれば、それはそれは幸せなんだろう。だけど、それが秋の最高の幸せかどうかは限らない。


 まあこんな感じで色々と不安な俺なのだけど。
 でも、だからこそ、本音を言ってしまえば、


 円堂と一之瀬、どちらが先に秋に手を差し伸べようとも構わない。その前に俺が彼女を、誰の手も届かないところへさらってしまえたら。秋は誰と結ばれても幸せになれるだろうから、俺が連れ去ってしまって、だからこそよく考えさせてしまえたら良いのに。それでもし、俺を選んでくれたら、なんて。
 だけどなあ、これも結構我儘で無茶な話だけど。

「土門くーん! 休憩時間始まってるよー」
「……おう! 今行くぜ!」

 空を越えて彼女を連れ去っても、きっとそこには不死鳥やらペガサスやら色々な難関が待ち構えているのだろう。でも、それよりも問題なのが、まず空まで行けるかどうかなんだよな。

「……行けたら良いんだけど」


 イカロスの羽は空へ近づくと、太陽の熱に焦がれて焼かれ、その身諸共、墜落してしまうんだから。



土門の口調かなり難しい。なんか秋ちゃんには幸せになってほしいんだけど、結構問題あるからな二人ともみたいな。