二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- さよなら恋心、 ( No.191 )
- 日時: 2011/10/08 18:05
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: Pvby2f.0)
- 参照: ややや、休めないorz
見渡す限り広がる、草若葉の海。ふわりと流れる涼風は、そんな海に波を作り出し、そのまま俺の頬を撫でた。
そこはまるで、一夜の夢の如く儚い刹那の世界。これが現実だということは理解している。そのうえで、この瞬間がずっと続けば良いと思ってしまった。馬鹿げてるなんて知ってる。だってこの夢は、覚めるも何も一度も始まっていないんだから。
わかっているのに、尊くて美しい。
嗚呼、お前がそんなだから、俺は甘美な理想を夢の世界でさえ実現できないんだよ。
「ほら、円堂くん」
その優しい声で我に返る。ぼーっとしながら振り向けば、生命の限りその唄を奏でるクローバ畑の中に、確かに彼女はいた。そよ風は彼女の髪をその道筋に巻き込み、ふわふわと煽る。踊るように舞うそれに、触れたいと願ってしまう俺はおかしい。
「見つけたよ、四葉のクローバー」
私の方が早かったね、と秋は笑う。探し始めたのは、確かに俺のほうが早かったのに。無意識に不服そうな表情をしてしまったのか、秋は薄く微笑み「きっと偶然、私の近くにあったんだね」と付け足す。
彼女の手の中をそっと覗けば——微かに土を被った両手の中に、それはちょこんと乗せられていた。幸せの象徴、そして、
「俺、全然見つからなかったのに」
円堂守には遠く、——そして縁の無いモノ。
ぎこちなくだが笑ってみる。何も訊かずただ優しく微笑んでくれた秋の優しさに、今だけは甘えておこう。
「……ねえ、円堂くん。早く行ってきなよ」
え? ——なんて野暮なこと、聞き返せる訳が無い。秋はきっと、全部を見透かしているんだろう。どこからが偽りで、どこまでが真実なのか。自分のことであるはずなのに、全くわからない。ただ、秋のそのやや引き攣った笑みを見れば、胸が抉られるのは時間の問題だった。
ぽとんと渡されたそれは、まだ青々としており美しかった。
でも、俺が持つべき物じゃないんだ。
「……ダメだよ秋、そんな簡単に渡したら」
「え? でも私、最初から円堂くんにあげるつもりだったし」
「それでもダメだ。絶対、受け取れない」
きょとんと首を傾げ、そう? と呟く秋。お人好しにも程がある、と言うか。でもそれを言うと、何かが変わってしまいそうで怖いからやめておく。
それに俺だってさ。言わせて貰うけど、そこまで薄情なヤツじゃないよ。
——人の幸せ、簡単に掠め取れるほど薄情じゃ無いんだ。
「これは秋が見つけたから、秋の幸せなんだ。俺なんかに、もったいないぞ?」
不思議そうな表情から、くくくと喉を鳴らし小さく笑い出した秋。俺、何か変なこと言ったかなあと悩むが、思い当たる節がない。秋はその手に戻された四葉のクローバーに薄く笑いかけ、その満面の笑顔を俺にそのまま向けた。強張ってもいなければ、暗い訳でもない。惜しげもなく振りまかれる笑みは、いつもの彼女のものだった。そして、
知ってるよ。ぽつりと呟いた。
「自分の為にやってることだから気にしないで、円堂くん」
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秋はもう円夏だと諦めてたら可愛いな、なんて。円堂さんはそんな秋ちゃんを知っちゃったから引くに引けなくなっちゃったみたいな。本当はもっとシリアスにするつもりだったとです←
BSR見ながら書いてたんで文がおかしいです。でも気にしない(