二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 久々更新w ( No.214 )
- 日時: 2011/10/31 13:19
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: Tt5vDeWP)
- 参照: お久しぶりです!(´・ω・`)
◆
俺は彼女が好きで。
彼女は彼が好きで。
彼は彼女を愛してて。
それで良いんだと思ってた。
それが幸せなんだと、信じてた。
( 、もう戻れない過去の話 )
◆
十六夜の月明かりに照らされてそこに静かに佇む貴方様は、本当に美しかった。儚げなその雰囲気、それでいて凛々しい瞳。“美”を愛でるその世界に入りたいと、捨てたはずの人間としての性が訴えてきた。違う、と反論する余地など無い。その澄んだ瞳に、見たこともない私が映った。それはそれは陶酔していて、でもそれは仕方がないことで。
うつくしいつるぎ、そう謙信様が私を呼ぶたびに動悸がした。甘い響きに酔いしれて、いっそ溺れてしまいたいと願った。でも、もう遅い。私はもう、この方から逃れられないと悟った。
自分が自分でなくなっていく。
この温もりも甘さも幸福感もすべて、それを『愛』と呼ぶのだと知った。
月影の闇夜に溶け込んだソイツは、本当に理解しがたかった。高い木の上でうとうとと眠りこけている、その無防備さ。いつ誰から命を狙われるともわからないんだからと私に刻み込んだのは、他でもないこいつなのだ。儚げな寝息、それでいて凛々しい目元。普段、ふざけた戯言しか言わぬその唇は、真一文字に引締められていた。——私が敵だったらどうするつもりなんだ。そっとその頬に触れてみる。淡い温もりが、冷えた指先に沁みた。ぱちっと開かれる瞳。嗚呼、貴様狸寝入りか。そう怒鳴ろうとして知る。それに気付かなかったのは、他でもない私だったと。
“かすが、生きろよ”。そうこいつに告げられるだけで、酷く心が揺らいだ。刃で体を引き裂かれたように痛む。呼吸が、うまくできない。この息苦しさから逃げ出そうと思った。けれどもう、私はこいつを置いていくことができない。
自分が誰だかわからなくなる。
この冷たさも苦味も痛みも憂いも刹那の蜜もすべて、それを『 』と呼ぶなんて、まだ知りたくなかった。
( 知らない、いらない、 )
◆
それは刹那の戯言だった。
それは一夜の幻覚だった。
それは絶望の裏側だった。
それは闇夜の道標だった。
それは最期の禁忌だった。
それはきっと、『恋』だった。
( 好きです、伝えることさえ叶わない )
+
佐←かすです。なんかちょっとずれてるとか言わない。私の趣味だもん! 佐助はとっくに諦めてて、かすがはようやく自分の想いに気づくみたいな。