二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

 凶王の背に遠影は忍ぶ  ( No.229 )
日時: 2011/12/24 13:17
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: hKAKjiZ3)
参照: (´・ω・`)<とある神動画によりBSR愛が深まっていく私



「なぜお前はワシを斬るんだ?」
 一気に間合いを詰めた時、家康はごく自然に首を傾げ、不思議そうに尋ねてきた。アホか、いや馬鹿だ。今何をしているのか理解していないらしい。まあそうだろう。秀吉様を裏切るような輩だ、そのような思考回路など理解しようとも思わない。
 戯言は後にしろ、と刀一閃。駆ける閃光は確かにその拳を捉えていたがやはり見切られていたようで、がっちり防御されていた。一旦、後ろへと退き様子を伺う。家康はまだ、疑問の答えを求めているようだ。——救いようのない、とは貴様のことを言うのだろう、家康。
「……理由もわからない、と? ふざけるな、この裏切り者がッ!」
「確かに秀吉公を討ったのはワシだ! けれど、力で制圧するだけではいけないんだ!」
「黙れ! 私から奪ったものを、全て返せ!」
 秀吉様を、半兵衛様を、豊臣の天下を、あの日々を、——そして絆を。
「私から絆を奪った貴様に、それを語る権利は無い!」
 紫の一閃が家康の首元へ走る。けれどまだ、その首は遠い。
 嗚呼、憎い。あの男が憎い。頭を垂らし謝罪の言葉を吐かせ、そして斬滅してやりたい。私から全てを奪った貴様に、その絶望の先を見せつけてやりたい。
 全ては秀吉様の為に。全ては、豊臣の為に。
「ワシは……まだ、」
 何か言いたげに俯く家康は、結局続くであろう言葉を呑み込んだ。ゆらり、とその肩が跳ねる。言い訳になってしまうだろうが聞いてくれ、といつになく真剣に拳を握り始めた。
「秀吉公の家臣となり、お前がワシに背を預けたことがあったろう? ワシにはまだ、その記憶が忘れられないんだ。もし……もし、三成の憤慨の感情の中に、少しでもワシとの絆を奪われたことが入っているならば、ワシは素直に嬉しい」
 自惚れるなと刀を強く握りしめる。
 けれど完全に否定する前に、激しく胸が軋んだ。何てことだ。この男は私から全てを奪ったと言うのに。秀吉様も半兵衛様も豊臣の天下もあの日々も、刑部をも、全て全て葬り去ったと言うのに。
 認めたくない一心で、家康の言葉を待たずして刀を引き抜いた。そして己でも訳の分からないまま、足を進めていく。まるで誤魔化すように、まるで偽るように。

「なあ三成、お前はワシに心を許してくれていたのか? ——ならばワシはほんの少しだけ、後悔するだろうな」
 紫の一閃が家康の首元へと走る。けれどまた、その首は私には遠い。



関ヶ原のとある動画みた衝動で。最後の一文は仕様です。
豊臣の家臣時代、三成が家康に心開きかけてた云々を家康が知っててみたいな展開。うちの家康さんはどうも黒い。