二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

 愛したって、 [02] ( No.46 )
日時: 2011/07/26 19:59
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: eXBL1K9M)


   薄れていく想いと依存してた事実は、
   微笑んでいたキミとまるで<僕ら>のようで。
   「それでも好き…。」なの?


  #02


「おっはよー、桃花ちゃん!」

 教室に入ってしまえば、もうほとんど桃ちゃんと会話することはない。——というか、できない。珠香ちゃんは桃ちゃんにベッタリで、なかなか話しかけられないからだ。サッカー部のキャプテンっていう地位を利用して話す時もあるけど……連絡なんてほぼゼロに等しいから、無謀すぎる。桃ちゃんの席へと歩いていく二人の背中に、困ったように笑いかけると少し離れた自分の席にぼふっと荷物を置いた。

「吹雪、おまえ春崎と一緒に来たのか?」

 このくぐもった声は喜多海くんだ。あはは、ちょっとねと曖昧にはぐらかす。

「じゃあ、春崎は大変だなぁ。吹雪の親衛隊に狙われる」
「いや、春崎には真都路がついてるから大丈夫だろ。切り札に荒谷もいるし」
「……そうか。それもそうだなー」

 氷上くんも混ざり、和気藹々と盛り上がる。気づけば空野くんも来ていて、真都路を春崎から遠ざけるのは大変だぞーなんて冷やかされている。小突きあう氷上くんと空野くんを横目にちらりと窓際のほうを見遣ると、珠香ちゃんと紺子ちゃんの背中が見え、向かい合うようにして座っているのが桃ちゃんだと気付いた。あっちも似たような話をしているのか、色づいた頬を両手で隠す紺子ちゃんを桃ちゃんと珠香ちゃんが悪戯っぽく笑って見つめていた。珠香ちゃんは胸を張りもぞもぞと動くと、桃ちゃんと紺子ちゃんの手を取り笑い始める。きっと、二人がいれば恋人なんていらなーい! みたいな主旨のことを言ったのだろう。ドンマイ、空野くん。
 刹那、桃ちゃんと目が合った気がした。

 そう言えば桃ちゃんは、誰が好きなんだろう。

 小さい頃、アツヤと一緒に本気で——幼いながらも頑張ったんだ——桃ちゃんに告白したことがある。その時、彼女はどっちとも好きだと言ってくれたけど、もうそれも随分古い記憶だ。しかも桃ちゃん、人生の半分をフランスで過ごしてるからね。記憶が消えててもおかしくない。あの時はその答えで解決したけど、今、そんなことを言われたら……それも辛い。けど、違う人の名前がでてくるのも、嫌だ。
 唸りこんでいるうちに視線を感じて顔を上げた。ばっちり、桃ちゃんと目が合って。薄く微笑んでくれた彼女に、僕も笑い返した。
 隣の氷上くんに小突かれて困った。桃ちゃんも紺子ちゃんに何か言われたようで……どうしたんだろう?