二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 愛したって、 [03] ( No.47 )
- 日時: 2011/07/26 19:59
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: eXBL1K9M)
- 参照: 忙しい展開w
消えるべきなのだろうか?
<彼>も、<僕>も、キミのために。
ならば運命と呼ぼう。
涙流す<僕ら>を愛せ!
#03
一日はホントにあっという間で。
忘れ物を取りに教室に来ていた僕はふと、窓の外を覗いた。まだ部活は始まったばかりで、皆はストレッチをしていた。喜多海くんと空野くんが柔軟運動に苦戦する隣で、紺子ちゃんが膝を曲げずに地面に手をついて見せる。真都路ちゃんが新手のいじめなのか、男性陣の背中をぐいぐいと押していた。嗚呼、空野くん、嬉しそうなのか可哀想なのかわからないよ。
机の中をがさがさと漁れば、……あった。宿題の数学プリント。ちゃんと枚数あるか確認してから四つ折りにし、椅子を机の下に入れた。椅子の足と床が擦れ、耳障りな悲鳴が聞こえる。さて、帰らないと。
刹那、そこにいるはずのない影が僕の目に映り込んで。
真剣な表情の彼女が、教室の入り口に佇んでいた。
凛とした桃色の瞳が何故か、僕を責めているように見えて——視界が歪む。
「……どうしたの、桃ちゃん」
返事はやっぱり返ってこない。
震える華奢な身体、薄く涙が乗った瞳、ぎゅっと噛み締められた唇。嗚呼、彼女、泣いてるんだ。大粒の涙も見えなかったけど、嗚咽も聞こえなかったけど、瞳は確かに泣いていた。僕が彼女に寄り添うよりも早く、小さな身体が飛び込んでくる。情緒不安定な桃ちゃんなんて久しぶりだ、ぼんやりと頭の片隅で考えながら、おそるおそる手を伸ばす。彼女はやっぱり、暖かくて。
「桃花、」
「——士郎っ!」
ぽたりと落ちた雫は、澄んでいてそれで輝いていた。綺麗、だけど。こんなもの、もう二度と彼女に流させてはいけない。僕が桃ちゃんを護るんだ。たとえ、彼女の小指に巻かれた赤い糸が違う人と結ばれていたとしても。
僕が桃ちゃんを愛しちゃいけないわけが無い。
——そうだよ。
愛したっていいじゃないか。想いが通じ合わなくとも、その笑顔が見られれば。殺したっていいじゃないか。ちっぽけな僕の愚かな願い如き、消えても誰も惜しまない。
それを恋慕と呼ばずとも、彼女が僕の隣に居続けてくれる事実に変わりはない。たとえそれが、彼も僕も——本当の吹雪士郎を押し殺す行為だとしても。僕は彼女を愛し続けよう。愛さずにはいられないのだから。
「好き、だよ」
ぎこちなく伝えてみる。
返事は聞こえなかったけど、僕を呼び続ける彼女の声が答えだと勝手に決めつけ、桃花を抱きしめた。甘い匂いに、酔わされて。
【fin】