二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: どうぶつの森〜どうぶつ村の軌跡〜 ( No.20 )
- 日時: 2012/01/06 23:11
- 名前: るきみん (ID: JryR3G2V)
第一話
Ⅲ
「あー? あんた、だれ?」
狼さんの家と役場はかなり近かった。狼さんの家を出たところで近くに明かりがあり、それをたどって来たら役場だった。我ながらラッキー。
「え・・・っと、今日からここに住むことになったみなみです・・・。聞いてませんか・・・?」
「あー・・・ちょっと待ってな」
ぺりみさんは「めんどくせー」とか「客とかちょーひさしぶりー」とかいいながら奥に行ってしまった。
今話していたのがぺりみさん。話し方はちょっとあれだけど・・・いいペリカンさんだ・・・と思う。
静寂。
私以外誰も居なくなった役場に静寂が訪れる。
さっきの狼さんの言葉を思い出す。
『出ていって!!!今すぐ!!』
『だから・・・だからもう帰って・・・!』
あのときの言葉と共に狼さんの表情もフラッシュバックする。
すごく・・・怒っていた。
・・・いや、怒っていたのではない。怖がっていたのだ。
みなみに・・・そして人間に。
「あーあったあった、あんたが引っ越してくるみなみね。よろしくよろしく」
そう言いながらファイルのような物を持ちながらぺりみさんが戻ってきて、まったく気持ちのこもっていないよろしくをする。
「ふんふん・・・で、この村に何しに来たの?」
「え・・・引越しですけど・・・」
それなら分かっているはずだ。・・・やっぱり、ぺりみさんもあの狼さんのように私を軽蔑するのだろうか・・・。
「そうじゃなくて、何でこの村にしたの?」
「え?・・・それは、お母さんがいい所だって言ってたので・・・ってゆうかぺりみさんは私をみて何も思わないんですか?」
「うん?・・・ちょっと変なやつだなーってことぐらい。だってこんな寂れた村に来るぐらいだし」
「いえ、私が怖くないんですか・・・ってことです」
さっきの、狼さんのように・・・。
「? なんであんたを怖がらなきゃいけないの?・・・はい、住民手続き完了。この地図の通り自分の家に行ってね」
「私が・・・怖くない・・・」
確かに、私を怖がっている様子はぺりみさんには微塵も感じられない。
「ささ、もう夜も遅いし、さっさといってさっさと寝な」
みなみは時計を見る。もう10時を回っている。
「は、はい・・・。ありがとうございました」
「あーはいはい」
ぺりみさんに背中を押されながら、役所を出る。そのときのみなみは少し笑顔になっていた。
☆
その後、暗くてよく見えない地図に懐中電灯を当てながら、これから自分の住む家を目指した。
5分ぐらいさまよってようやく自分の家を見つける。当然のことながら狼さんの家よりもかなり小さい。
「ここが私の家かぁ・・・ってどわぁ!!!」
家の壁にもたれ掛かっているたぬきがいた。正直びびった。かなりびびった。
「死・・・んでないよね・・・」
死んでいたりしたら最悪だ。私がいまから住む家の前でたぬきが死ぬなんて、縁起が悪すぎる。
「・・・・・・」
たぬきに近づいて懐中電灯で照らしてみる。すうすうと寝息を立てているところを見ると、死んではいないようだ。
「・・・ほっとこう」
こうゆうのは下手に触らないほうがいいだろう。
たぬきの上に傘を置いて雨が当たらないようにしておく。かなり雨も弱まってきていたが、このまま放置しておけば風邪を引いてしまうだろう。
みなみの優しさである。
ガチャ
家のドアに鍵は無く、入ることができた。
驚愕。
その一言に尽きた。
その家には家具といえるものが無かった。
あるのはみかん箱とラジカセのみ。キッチンやトイレなどはどこにも無かった。
「こ、ここで暮らせるの!?」
しばしみなみが唖然としていると、
「ふあ〜、あ、みなみさん来てたんだなも」
急に後ろから声が聞こえて振り返る。
そこにはさっきのたぬきがいた。二つの足で立っている。これもどうぶつだろう。
「この傘ありがとうなんだなも〜。おかげで風邪を引かずにすんだ・・・へっくしょい!!」
ずるずると鼻をすすりながら傘を返してくる。やっぱり風邪を引いてしまったらしい。
「では改めて・・・僕がたぬきちなんだなも!この村で商店をやっている者なんだなも。以後お見知りおきをだなも」
「は、はぁ・・・」
「ここにおいてある家具はサービスなんだなも。自由に使ってくれていいんだなも」
ん?このたぬきちさんとやら今なんて言った?
サービス?この家具が?たぶん売れ残りだろう。
「じゃあこのお家の代金、19900ベルいただきま〜す」
へ?ベルってなんだろう。円でいいのかな?
たぬきち「これでもかなり安いんだなも。お母さんがほとんど払ってくれたんだから」
お母さんが・・・あとでお礼の手紙送らなきゃ。
「それで、ベルってなんですか?」
「ああ、みなみさんは人間だから知らないんだなもね。ベルってゆうのはどうぶつ達共通の通貨なんだなも」
「ふ〜ん・・・あ、でも私円しかもっていません・・・」
たぬきち「ああ、そのことならみなみさんのお母さんから聞いてるんだなも。アルバイトでもさせて借金を返させてとのことなんだなも」
「うへぇ・・・」
たぬきち「でも今日はもう疲れてるだろうから、アルバイトは明日からでいいんだなも。屋根裏部屋にベッドがあるからそこで寝るんだなも」
「ふあ〜い」
そういえば今日はいろいろありすぎて疲れている。
バスでもぜんぜん眠れなかったし。
ここはたぬきちさんの言葉に甘えて寝るとしよう。
「じゃあ、おやすみなさいなんだなも〜」
「はい、また明日です」
そう言って、たぬきちは私の家から出て行った。
・・・どうでもいいけど、私の家ってなんか響きがいいよね。
そんなことを考えながら、みなみは重い足を引きずって屋根裏部屋に続く階段を登るのであった。
みなみは布団に入り、今日あったことを思い出す。
お母さんがいきなり一人暮らしのことを言い出したこと、みしらぬ猫さんにお母さんの昔のことを聞いたこと、狼さんに軽蔑されたこと・・・、ぺりみさんが私を怖がらなかったこと、そして、私に家を提供してくれたたぬきちさんのこと。
こんなに色々なことがあった一日は久しぶりだ。明日もこんなに色々なことがあるのだろうか。
とりあえず・・・今日のところは・・・寝よう・・・。
寝る前にみなみが思い浮かべたのは、お母さんのことだった。
相変わらず外では雨が降っていた。