二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: どうぶつの森〜どうぶつ村の軌跡〜 ( No.31 )
日時: 2012/04/04 14:07
名前: るきみん (ID: JryR3G2V)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode

               第一話

        Ⅶ

「…」
「…」
たぬきちの話が終わる。しかし、二人とも何も話す気になれずに、ゆっくりと時間が過ぎていく。時間。それ以外、お店の中で動いているものはなかった。
「あ、あの…それで、そのことをビアンカさんは知っているんですか?」
みなみは沈黙に耐え切れなくなり、早口でたぬきちに問う。するとたぬきちは、ゆっくりと、口を開いた。
「うん…知って、いるんだなも。僕が、教えたんだなも」
「…というか、なんでたぬきちさんはこの話を知っているんですか? 高台にはビアンカさんとお母さんしか居なかったんじゃ…」
「実は…僕は見ていたんだなも。近くの、茂みから。最初、潮風に当たろうと思って、高台にいったんだなもが、そこで、ビアンカさんとレベッカさんを見たんだなも。でも、僕よりはやく男たちが現れたんだなも。僕は怖くて、動けなかったんだなも…」
あのとき、僕に勇気があれば…と、たぬきちは悔しそうな顔で言う。しかし、それは間違いで、あの時たぬきちが出て行ったとしても、あまり意味はなくて。その事は、頭では理解しているのだ。でも、その事を認めたくなくて。何か責めるものが欲しくて…その標的を自分にし、たぬきちは自分のことを責め続けてきた。何度も、何度も。10年間の間、何回も後悔し、何回も責めた。気が遠くなるほどの期間…飽きることなく何度も…何度も…
そんなたぬきちの話を聞いたみなみは———
無意識のうちに、走り出していた。

                   ☆

「ビアンカさん!」
「…なによ」
村の高台、どうぶつ村で一番の景色が見えるこの場所で、ビアンカさんは私が来るのがわかっていたようにこっちを向いてたっていた。
「え、えっと…その…」
と、飛び出してきたのはいいものの、何を言えばいいんだろう…やばい、何も考えてないよ…
「言いたい事がないならそこをどいて、私は家に帰るわ」
相変わらずの絶対零度の視線で私を見ながらそう言うビアンカさん。そこには、相手に全く心を開かず、ずっと一人で生きてきた寂しいどうぶつの姿があった。
「待ってください、私の話を聞いてください」
そういっている間にも、頭をフル回転させて何を言うべきかを考えていく。
「あなた…ずいぶんしつこいのね…もういい加減迷惑しているの、そこをどきなさい」
「イヤです」
ビアンカさんが不機嫌なのがわかる。でも、ここで退いちゃったら…ここでどいちゃったら…もう二度と、ビアンカさんがだれかを信じることも、だれかに心を開くこともなくなってしまうだろう。でも…それ悲しすぎると、思う。だって、誰も信じないってことは、誰かを好きになったり、楽しくおしゃべりすることもできないんだと、思う。そんなこと…悲しすぎるよ…絶対、だめなことだよ…
「だめ…ビアンカさん。絶対、ここを通さない。私の話を聞いてください」
「あなた…いい加減にしないと、無理にでもそこを———」
「誰かを信じるのを、怖がらないでください!」
ピキ、と、時間が止まったかのように、ビアンカさんの表情が固まった。
「な…まさか、あなた…あの話を…聞いたの…?」
「…はい。お母さんのことを、たぬきちさんから、聞きました」