二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

 [002]  ( No.13 )
日時: 2011/07/18 18:44
名前: ゆう ◆Oq2hcdcEh6 (ID: /HyWNmZ0)

【 エイリア学園/亜美、ラティア】

「……亜美、」
「どうしたの? ラティア。私達はまだまだ出番が無さそうだけど、」
「——違うわ」

 ふらりと現れたエメラルドグリーンの髪を持つ少女——ラティア・クラリスは“お父様”こと、吉良星二郎の部屋の縁側に腰を掛けのんびりと向こうを見つめている亜美の名を呼ぶ。亜美は彼女が望む返事はせず、ただ出番はまだだと呟いた。ラティアは首を左右に振り、違うともう一度強い声で呟いた。

「私は、亜美のやり方に賛成出来ないの」
「——やり方?」

 首を傾げる亜美に、ラティアはこくりと小さく頷く。亜美のやり方は事前に相手と接触し——思い切り裏切るというものだ。そして、恐怖を植え付けた揚句に全てを壊す。何よりも性質の悪いやり方だ。
 ラティアはそれが嫌と言うわけではなく——純粋にサッカーを楽しみたいという気持ちが強い為に、エイリア式のやり方にはあまり賛成できずに居た。それは亜美も同じなのだが。

「……ラティアは、私が裏切ると思ってる? エイリア学園のことを」
「ええ、本当のことを言うならね」

 ラティアの言葉を聞いた瞬間、亜美がくすくすと笑いだした。
 怪訝そうな表情になるラティアとはうって変わり、亜美は心底楽しげん笑う。

「……裏切るよ?」
「やっぱり……私は出来るだけ貴女に着いて行くつもりだけどね」
「……私にはね、大切な人が居るんだ。遠くで待ってる人が、……ね」

 にっこりと淡い笑みを浮かべた亜美の“大切な人”はラティアも、吉良星二郎すらも知らないと言われている。うっとりとした視線で遠くを見つめる亜美は、何処か哀しげな瞳をしていた。ラティアは溜息を吐き、その場から姿を消す。亜美も次いで自室へと向かう為にその場から姿を消した。

「……ほんと、分からないわ」

 彼女の考えていることは。
 ラティアは無表情のまま、亜美の自室の扉を暫し見つめた後——漸く自分も自室へ向かおうと歩きだした。


( 彼女の闇は深く、黒く )

*

【 イナズマキャラバン/彩音、ティアラ、雷門イレブン 】

「あたしのジュースが消えたあああっ!」
「ええっ!? 捜さなきゃ!」
「ジュース如きでそんなに騒ぐなよ……、」

 頭を抱えて叫ぶ彩音、ジュースを探し始めるティアラ——騒がしい仲間に、風丸は呆れ乍苦笑を浮かべた。そんな風丸に、「まあ良いじゃないか!」と円堂が楽しげに声を掛ける。円堂も同じくジュース探しを始める光景を見て、雷門イレブンの面々は再び深い溜息を吐いたのだった。
 瞳子は何処か楽しげな表情を浮かべつつも、心は不安でいっぱいだった。白恋中で挑発してきた少女、亜美は彼女の大事な妹だったから、だ。ヒロトも例外では無い。しかし、瞳子は何よりも亜美の身を案じていた。父親の元でサッカーをするという行為は、危険だったからだ。

「監督、ありません!」
「……、」
「監督?」
「っ……ごめんなさい。何処かに落とした可能性も無いとは言えないわ」

 状況報告らしきものをしているティアラの言葉で漸く瞳子は我に返る。彼女はもう敵なのだと言う事を再び口内で噛み締めるように心に刻んで、彩音に冷静にそう返す。彩音が落胆した表情を浮かべているのを見て、ティアラが彩音に駆け寄り必死で慰めていた。

「……っぁ、」

 ジュースを模索している途中、彩音の手が止まる。
 ティアラが怪訝そうにのぞきこむと、彩音がじっと見つめていた写真があった。その写真に写るのは、幼い少女が三人。真ん中で白い歯を見せて嬉しげに笑っているのが彩音だろう。其処でティアラは気付く。彩音の手が小刻みに小さく震えている事に。

「……彩音?」
「っあ、ご、ごめん! 何でも無いの!」

 控えめに声を掛けると彩音はへらりと何時もの気の抜けた笑みを浮かべて、隠すように笑顔を張り付ける。ティアラは再度不安げに彩音を見たものの、秘密の一つや二つ、自分にもあるじゃないかという考えがよぎりこれ以上は気にしないことにした。


( 隠しているものは、何 )