二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- [016] ( No.130 )
- 日時: 2011/08/28 13:32
- 名前: ゆう ◆Oq2hcdcEh6 (ID: l78GGQ1X)
ゆっくりと目を開けた。視界がぼやけている。私、倒れたんだっけ。ぼんやりとした頭で考える。ずきん、と足が痛んだ。昔と同じ痛みに、眉を寄せる。ばたばたと騒がしい足音が聞こえる。
「、大丈夫?」
「——瑠璃花ちゃん……?」
名前を呼べば瑠璃花ちゃんは笑んで、「皆に伝えてくる」と部屋を出ていってしまった。ぽつん、と一人きりになった部屋で外を見る。相変わらず憎らしい程の青い空に、思わず自嘲を含んだ笑みが零れた。
——嗚呼、そうだ。お姉ちゃんが死んだときも晴れていた。春の、桜が舞い散るあの日。ブレーキ音と叫び声、体に走る衝撃と背中を押された感覚。私が、お姉ちゃんを、殺した。私が飛び出しさえしなければ、私がサッカーをしなければ、お姉ちゃんは死ななかったのに。
「、亜美ちゃん」
がらりとドアが開けられる。入ってきたのは彩音ちゃんだった。どうやら皆は大海原中学校に向かっているらしい。そりゃあ、私の心配をして、とは言わないけど。残っているのは彩音ちゃんだけ。ラティアが私を置いて行くはずがないと思っていると、仕事があって少しの間来られなくなるということを聞いた。
「亜美ちゃん、香奈ちゃんのことなんだけど、———」
「……何? 今更何なの? 泣くの、泣いて責めるの? あの時の皆みたいに? 彩音ちゃんだって本当は私のこと嫌いなんでしょ? それとも下手に慰める? あの時の——あの時の彩音ちゃんみたいに、あの時の基山みたいに!」
感情が昂ぶった。今までずっと溜め込んでいたものを吐き出した。それは気持ちよくて、とてもすっきりした。けど、後悔した。彩音ちゃんの顔が、泣きそうに歪んでいたから、とても傷ついた顔をしていたから。
彩音ちゃんの目には涙が溜まっている。そんな顔は見たくない、やめてよ——そう思うのに、口は開いてはくれなかった。動かないんだ。すべてが、何もかもが、静止してしまったかのように。ぴたりと止んだ音、何もない静かな世界に二人で居る。
「……ご、めん、」
「良いの、そうだよね。……亜美ちゃんには悪いことしちゃったよね。慰めなんて要らなかったのに」
「、彩音ちゃ、」
「——ごめん、一人にさせて」
がたん、と激しくドアが閉められた。音が、戻ってくる。がやがやとした雑音が邪魔して何も聞こえなかった。苦しかったのは私だけじゃない、彩音ちゃんも基山も、父さんも、皆みんな苦しかったんだ。なのに、被害者面してたのは私だけ。馬鹿みたい。
ふわりと浮かんだ涙が、頬を伝って落ちた。気が付けば私は、何時もひとりぼっちだ。
(後悔しても、もう、遅い)