二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- [008] ( No.67 )
- 日時: 2011/08/21 11:51
- 名前: ゆう ◆Oq2hcdcEh6 (ID: nrSQA2z/)
——ふわり。
不意に、風が吹いた。どんよりとした暗い空間に、あたしは一人だった。これは、夢? 遠くで亜美ちゃんの声が聞こえる。どういうことか、何も分からない。嗚呼、あたし……。
「あ、みちゃん……」
掠れた声が出た。視界が徐々にはっきりしてくる。見えてきたのは、亜美ちゃんとその横の可愛らしい女の子。亜美ちゃんははっとしたような表情で此方に近づいてくる。イプシロン戦までの記憶はあったのに……此処は、どこ? 亜美ちゃんが穏やかな表情を浮かべる。
「彩音ちゃん、ごめん、」
ぽつり、と小さなそんな声が聞こえたかと思えば再びあたしの視界は黒く染まった。——どういうこと? 声だけはいまだ聞こえている。ジェネシスがどうとか、そういうのばかり。ただ、亜美ちゃんの表情が一瞬歪んでいたのは覚えている。そして完全に意識は無くなった。
「——ちゃん、早くー!」
——?
「待ってよ彩音ちゃん……!」
——何だ、これ。
「、そんなに慌てない!」
——これ、あたしの……。
「ごめんね———亜美ちゃん、香奈ちゃん」
あたしの、知らない、記憶……? 亜美ちゃんに香奈ちゃん。聞いたことが無い。いや、ある。あたしの幼馴染だ。
崩壊した家庭。お兄ちゃんと別れて引き取られた先は“おひさまえん”。聞き覚えが全くと言って良い程無いそこに、あたしは居た。いろんな家族と幸せだった。嗚呼、でも。
「お姉ちゃん……!」
ブレーキ音、亜美ちゃんの悲鳴。確か、香奈ちゃんは、事故に遭って死んだんだ。あまり亜美ちゃんは友達を作らない子だったし、香奈ちゃんと亜美ちゃんは姉妹だった。亜美ちゃんは誰よりも香奈ちゃんを、香奈ちゃんは誰よりも亜美ちゃんを愛し、信頼していた。
それからは何も覚えていない。気が付けばもう10歳で、今の親が居たのだから。思い出した記憶の欠片。香奈ちゃんの死は亜美ちゃんにとってもあたしにとっても大きな影響を与えたんだ。
あたしの持つあたしと二人の写真。あれをみる度痛む心は、これを訴えていたんだ。
だから亜美ちゃんは最初からあたしを知ったようなそぶりを見せていた。だから——だから、亜美ちゃんはこうなった。あたしは知っている。お日さま園が、今のエイリア学園であることを。
「、」
そしてあたしの意識は完全に闇へと堕ちた。——ごめんね、という言葉が聞こえた。やけに、寂しげな声音だった。香奈ちゃんを奪った人物は、あたしはきっと覚えてる。
( 知られざる過去は唐突に )