二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

叶わない想いと口付けを一つ、 ( No.56 )
日時: 2011/08/02 19:28
名前: ゆう ◆Oq2hcdcEh6 (ID: uUVs9zNY)

「——亜美さん、俺、」
「知ってる、でも、ごめん」

 好きです。
 そう言っても亜美さんは笑みを浮かべて謝るだけだ。亜美さんは俺なんかに振り向いてはくれないし、大人っぽい容姿に似合わない無邪気な笑みも全部全部俺のものにはなってくれない。彼女は好きな人は居ないと言うのだけど、俺はそんな事信じられなくて。
 さらりと風に揺れる彼女の髪にちゅ、と小さくキスを落とせば彼女は擽ったそうに身を捩じらせて笑む。まだ俺に構ってくれるだけマシ、なのだけれど。

「私さ、篤志くんと9歳も離れてるんだよ? なのに良いの?」
「恋愛に年齢なんて関係ないです、から、」
「……そっか。そういう子、嫌いじゃないよ」

 そんな言葉で俺を期待させないで。
 貴女はそれでも俺に相変わらず無邪気に笑いかけてくれるから、貴女は誰にでも平等に、優しく甘く接するから。だから俺は、


( 手段を残されなくなる )


*


 淡いリップ音と共に解放された唇にはまだ熱が残っていて。
 目の前でにんまりと笑う彼の姿を今は遠い誰かに重ねればそのまま彼に飛び込んだ。甘えることに躊躇は無い。ただ、このまま彼に溺れてしまっても良いかという葛藤が未だ残る。答えはノーなのだろうけど。私には愛する人も居なければ、恋愛したいという気持ちもない。それでも此処までされれば彼に溺れてしまったほうがいっそ楽になれるんだと思う。

「亜美さん、」
「……ごめんね、私、」


( まだ人をあいせないわ )





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