二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン エイリア学園ウィンドレス ( No.109 )
- 日時: 2011/11/04 11:29
- 名前: アラン (ID: zGIWZsqg)
第五話 もしも僕らが潰れたら
キャラバンに戻ると、瞳子は一人だった。もうお昼時だし、他のメンバー達は買出しにでも行っているのだろう。
「姉さん」
ウィンディーが呼びかけると、瞳子は特に驚いた様子を見せる事もなく、自分とバーンの方に振り向いた。
「……来夢、晴矢」
自分達の名前を呼ぶその声に、胸が締め付けられる。切なさが憎悪と入り混じり、ウィンディーは喉から熱い物が込みあがりそうになる。
「さっきは、ありがとう」
ウィンディーが言う。
「私、何かお礼言われるような事、したかしら」
「何も、聞かないし、言わなかったから。だからありがとう」
ウィンディーは瞳子に笑いかけようと顔をあげるが、その前に晴矢がそれを阻止して、自分を押しのける。
そして、まるで血に飢えた野獣のような目で、瞳子を睨み付けた。
「てめぇ、何企んでるんだ?」
「ちょっと、はる……」
ウィンディーは止めようと、バーンの前に飛び出ようとしたのだが、彼のその目のほぼ真正面の近くで見てしまい、思わず固まる。
見てはいけない物を見た。そう言う気持ちでいっぱいだった。
その目の中に、晴矢は存在していなかったのだ。そこにはバーンがいるだけだった。
海辺で話した時の晴矢は消えていなくなり、この人はウィンディーの知らない人だった。
そこには、大きな声で笑って大きな声で泣いていた晴矢は存在していなくて、自分の前に立っているのは、ただ幼馴染の姿かたちに良く似た知らない人なのだ。
結局、捨てられるんだ。
自分は、いつか不利だと判断されたら切り捨てられる。彼にはその覚悟が出来ている。彼だけではない。ガゼルも、グランもそうだ。そして、自分もきっとそうだと思う。自分達は戦いの真っ最中で、今この瞬間は、ただ自分とバーンが計画したお芝居に過ぎないのだ。
みんな、認めてほしい。存在理由がほしい。
それだけの事だ。
「私は、あなた達に雷門を体験してほしいと思ったの。円堂くんに触れる事によって、あなた達の考えが変わるかも知れないわ」
「考え?」
勝手に口が動いていた。
バーンがこちらを見る。その目が、驚愕によって見開かれたのが分かった。
「考えが変わっても無駄なんだよ。こっちは、自分自身の存在のために戦ってるの。だから、変わっても、きっとやめられない」
そう言って、唖然とする姉さんに笑いかけた。
自分達は必死に戦って戦って認めてもらうしかないのだ、自分という存在。
その為には、幼馴染も家族も関係ないと、決めたのだ。
でも、ランランと照りつける太陽の下で食べたソフトクリームの甘さとか、波打ち際で励まされた言葉とそれに混じる水の音やキラキラと自分と見つめる宝石のような琥珀色を思い出すと、ウィンディーはやっぱり、少し泣きたくなってしまうのだった。