二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: プロローグ ( No.1 )
- 日時: 2013/01/22 03:15
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: 0aJKRWW2)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode
真実と理想、それぞれを司る英雄が激突した大戦から、一年が経過した。
一年という年月は長くも短いものだが、それは人も、物も、事も、そしてポケモンも変える。
しかし、そんな時を過ごす中で、カノコタウンに住む少年だけは、時間が停止していた……
「はぁ……」
イリスは自室にて溜息を吐く。これで何回目か、たぶん星の数ほど溜息をしている。
「はぁ……」
まただ。
イリスはNとの離別の後、仲間とともに故郷であるカノコタウンに戻ってきた。
しかし、その後は何もせず、ただ一年間を、溜息だけで過ごしている。ただ無気力に、虚空をみつめるばかりだ。
「……流石に、重症も重症だな……」
イリスの部屋を覗く影が三つ。ダークトリニティ……では勿論なく、一人は眼鏡をかけたイリスの幼馴染、チェレン。
「一年間もああやって過ごすって、ある意味凄いけど……実際の所はどうなんだろうね」
言葉を繋げるのはベレー帽を被った、こちらもイリスの幼馴染、ベル。
「師匠は辛いでしょうが、見てる側も辛いですよ。一年間も何もせずにああやってるのを見てると……」
ベルの言葉に返すのは、ピンク色の髪の少女。イリスの弟子であるミキ。
ちなみにミキは、心配だからと一年間イリスの家に居候している。その気持ちも分からなくもないというか、弟子として、それ以前に仲間として当然のことではある。しかしそれ故に、毎日毎日、兄であるザキから百通前後の手紙が来て、地球の資源が無駄にされている。
「僕らもあんな状態のイリスを放っておくのは流石にまずいと思ってカノコタウンから出なかったけど……それも限界だな」
チェレンはぼそりと本音が漏れるが、誰もそれを咎めたりはしない。
「……そうだ!」
ピコーンという擬音が似合うように手を叩き、ベルは何事かを閃いた。
「何を思いついたんだい、ベル」
チェレンはどうせロクでもないものだと思いつつも聞いてみる。
「こういう時こそのポケモンだよ、二人とも」
ベルはモンスターボールを握って見せつつ、そう言った。
「ポケモンバトルは無理だよ。前に試してみたけど、イリスに断られた」
「違う違う。そうじゃなくて」
ベルはチェレンの言葉を否定する。
「明日にでも皆でさ……ポケモン捕まえに行こう!」
ワンダーブリッジ。
最先端化学の最高傑作と呼ばれる、イッシュ四大大橋の一つだ。
この橋の特徴はまず美しいデザイン。そしてあらゆる衝撃を吸収する新素材。これがワンダーブリッジ最大の特徴だ。
しかし、ここは今回素通りし、イリスたちはワンダーブリッジを渡った先にある15番道路のさらに先、ブラックシティへと訪れていた。
「なんか、嫌な空気だね……」
「ま、まあ、今回ここは通るだけだから、大丈夫だよ」
チェレンの呟きに、ベルが答える。
ベルの発案で、イリス、チェレン、ベル、ミキの四人はポケモンを捕まえるべく、ホワイトフォレストに行こうとしていた。
しかしそれにはここ、ブラックシティを通らなければならない。ブラックシティは大きな大都市だが、治安のよい街ではない。というか、治外法権で、完全に自治区である。
ブラックシティは金さえあれば何でも手に入り、金のためなら何でもする輩が大勢いる。街で一番大きなマーケットでは、ポケモン、果ては人身売買が行われているという噂もあるくらいだ。
「それじゃあ、こんな所さっさと抜けて、ホワイトフォレストに……イリス?」
チェレン達が歩き出そうとするが、イリスは足を止め、一つの建物を凝視している。
ブラックシティ一のマーケット、通称『暗黒市場』だ。
「呼んでる……」
イリスはそう呟き、マーケットの方へと走り出す。
「イリス!」
チェレンは走り出したイリスを追いかけ、ベルとミキも続く。
この物語はイッシュの、そして世界の存亡を賭けた戦記。そしてこれは、世界を救う少年少女の新たな旅の始まりである——
プロローグっぽくないプロローグでしたが、これが僕です。そして前作のプロローグもこんな感じでしたから、問題ないでしょう。ちなみに、このあとがきはいつまでも続きます。では、次回をお楽しみに。